研究領域 | 都市文明の本質:古代西アジアにおける都市の発生と変容の学際研究 |
研究課題/領域番号 |
21H00009
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 |
研究代表者 |
紺谷 亮一 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (50441473)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アナトリア / 都市 / 都市成立過程 / キュルテペ / 前期青銅器時代 / 後期銅石器時代 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①前期青銅器時代の遺跡空間データベースの作成、②中央アナトリアに位置するキュルテペ遺跡の発掘調査を行うことで、アナトリアにおける都市成立過程を明らかにすることである。特に発掘調査では、大規模モニュメント、建物址群、周壁についてそれぞれ調査を行い、これら3つの要素を時空間的に捉えることで、都市成立過程の集落構造とその変遷を明らかにすることを目指している。2021年度では上記①・②を行った。 1.遺跡空間データベースの作成:これまで紙ベースで出版されたデータベースのデータ化を行った。データ化項目は位置情報・年代・土器様相・遺構の種類・年代値・文献等であり、前期青銅器時代を対象に行った。 2.キュルテペ遺跡の発掘調査:テル中央部に設定したトレンチにおいて、東西方向に伸びるジグザグプランの大型建築址を検出した。当該建築址は、幅1.5mを超える日干しレンガから構成され、璧体は高い所では、床面から2mまで残存していた。出土土器には、中央アナトリアにおいて後期銅石器時代から前期青銅器時代I期に特徴的な遺物である赤黒土器や表面に白色刻文が施された黒色磨研土器等が出土した。また、獣骨の出土が極端に少なく、一般的な住居とは異なる傾向がみられた。年代測定を行った結果、BC3300頃であることが明らかになり、後期銅石器時代の遺構であることが判明した。これにより、キュルテペ遺跡の居住開始時期が当該時期にまで遡ること、および、この時期に大型建築址が存在することを初めて明らかにした。 成果については、学会・論文等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定は、①遺跡空間データベースの構築と②キュルテペ遺跡の発掘調査であった。①については、前期青銅器時代遺跡の数が多く終了させることができなかった。②については、コロナ禍の影響が心配されたが、発掘調査を行うことができた。しかし、日本・トルコ両国の参加メンバーが一部参加できなかったことや、発掘人員を当初予定通り集めることが困難となったなど、十分な期間や面積を調査することがかなわなかった。そのため、発掘調査がメインとなり、整理作業の時間が短縮された。それでも中央トレンチにおいて後期銅石器時代の大型建築址を検出できたことは、当該時期の研究にとって大きな成果といえ、学会等において発表をおこなった。 以上、①は終了できなかったが、②については大きな成果を得ることができたため、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、上半期にデータベースの構築を完了させる。発掘調査ではテル中央部に設定したトレンチの拡張および掘り下げを行う。これにより、後期銅石器時代の大型建築址の全貌を明らかにするとともに、それ以前の物質文化の状況を明らかにする。得られた資料は考古学的な分析を行いつつ、年代測定を実施し年代を得る。また可能であれば、別地点にもトレンチを設けて調査を行い、都市構造についての考古学的情報を得る。 渡航が困難な状況な場合には、国内で実施できる活動を優先させる。キュルテペ遺跡から得られた資料に関しては、一部の試料を除いて必要なデータはすでに手元にあり、国内で研究を実施し、成果を発表していく体制は整えられているといえる。
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