昨年度は、Inゼオライトで得られた知見に基づき、活性は高いが、選択性が低いとされているゼオライト内Gaヒドリド種の精密制御により、高活性と高選択性を両立した脱水素触媒(Ga-MFI-1.0(800))を開発した。本年度は、ゼオライト骨格がヒドリド種生成に与える影響とin situ 分光測定による反応条件下でのヒドリド種生成について研究を行った。ゼオライト骨格の影響を調べるために、Ga-MOR、CHAを新たに調製し,in situ FTIR測定を行い、Ga-MFIと比較した。Ga-CHAではGa-H伸縮振動のピークがほとんど検出されなかったが、Ga-MORでは高い強度でピークがみられた。エタン脱水素反応において、Ga-MORはGa-MFIに比べて活性は低かったものの、良好なエチレン選択性と耐久性を示した。一方、Ga-CHAは反応時間の延長に伴い活性が低下し、転化率もGa-MORよりも低くなった。ゼオライト骨格の影響を理解するために、in situ FTIR測定を利用したH-D交換反応から推定した活性なGaヒドリド種の相対量に対して、定常状態でのエチレン収率をプロットしたところ直線関係が得られた。また、アイリングプロットからは、Ga-CHA、MOR、MFIは全て近い活性化障壁の値を示した。これらの結果は、ゼオライト骨格の種類や反応速度の違いに関わらず、孤立したGaヒドリド種が脱水素反応の活性点として作用していることを示唆している。
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