研究領域 | ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 |
研究課題/領域番号 |
21H00018
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
正井 宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70793149)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロトン / ソフトマテリアル / π共役化合物 / 光加工 / 光機能性材料 |
研究実績の概要 |
本研究は、プロトンの化学反応性を光で自在に制御し、材料機能の直接的光加工へと応用することを目的とする。有機反応化学の中でも最も基本的な反応剤であるプロトンの反応性を自在制御し、その反応性を材料機能へと結びつけることができれば、水素の自在制御性を革新的材料へと結びつけ、学問分野の枠を超えた高機能性材料の創成が期待される。そこで本研究では、プロトンと光を協働的に用いた光加工性機能材料に着目した。光加工材料は材料をマイクロスケールで加工するための有用な技術であるものの、材料が光に不安定という本質的な問題点を抱えている。本研究ではこの問題打開のための方法論として、光によって材料を直接切断するのではなく、加工時には光と化学的な刺激を協働的に作用させて光加工を行いつつ、加工後は化学刺激を除去することで、光加工性と光に対する安定性を両立可能である。 本年度は、白金錯体を架橋剤としてたポリマーネットワーク材料において、光・プロトン協働反応に基づく材料反応性の制御に成功した。白金錯体を架橋点として有し、ポリメタクリル酸メチルを母材とするポリマーネットワーク材料において、プロトンと光を協働的に用いた加工性を有することが明らかとなった。この特異な応答性に基づき、材料のマクロ物性を光とプロトンで制御することに成功した。 本材料は高い光安定性を有しながらも、光を用いた加工性を示すことが明らかとなった。加えて、本材料は高い光安定性を有するため、酸刺激の存在下で上記のような光応答性を有しつつ、刺激を除去した後は、光機能の1つである発光性を両立する材料であることが示された。さらに、光・プロトン協働反応に基づく材料反応性の制御をより産業的に実用性が高い概念へと発展させることを目的として、より安価な元素を用いた光・プロトン協働反応の開発にも成功し、本技術が汎用的な手法であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、白金錯体を架橋剤としてたポリマーネットワーク材料において、光・プロトン協働反応に基づく材料反応性の制御に成功した。白金錯体を架橋点として有し、ポリメタクリル酸メチルを母材とするポリマーネットワーク材料において、プロトンと光を協働的に用いた加工性を有することが明らかとなった。この特異な応答性に基づき、材料のマクロ物性を光とプロトンで制御することに成功した。 本材料は高い光安定性を有しながらも、光を用いた加工性を示すことが明らかとなった。加えて、本材料は高い光安定性を有するため、酸刺激の存在下で上記のような光応答性を有しつつ、刺激を除去した後は、光機能の1つである発光性を両立する材料であることが示された。さらに、光・プロトン協働反応に基づく材料反応性の制御をより産業的に実用性が高い概念へと発展させることを目的として、より安価な元素を用いた光・プロトン協働反応の開発にも成功し、本技術が汎用的な手法であることを実証した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、光・プロトン協働反応を高密度材料へと応用し、光機能性の制御を目指す。材料としてはより実用的なエラストマー材料や高分子ガラス材料という高密度材料中を選択する。高分子鎖が複雑に絡み合った高密度材料中における化学反応を制御することは、材料化学における重要な課題である。高密度材料中におけるプロトン反応性の制御についてより詳細に理解するとともに、材料適用範囲の拡張を目指す。応用の観点からは、発光・屈折・偏光といった光機能材料群の微細加工に基づく高機能化を実現する。これらの光機能は光加工と同じ光吸収に基づくため、従来は光加工が不可能とされてきた。一方で、プロトン・光協働反応性を利用した本手法では、加工後にプロトン源を除去することで、光機能性・光加工性の両立が可能となる。パターニングに基づく発光・偏光・屈折率変化を測定することで、プロトン反応性の光制御に基づく光機能性の直接的光加工を実証するともに、光微細加工に基づく特異な材料特性を明らかにする。
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