研究領域 | ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 |
研究課題/領域番号 |
21H00021
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大木 靖弘 京都大学, 化学研究所, 教授 (10324394)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多座配位子 / ヒドリド / 架橋配位子 / 分子触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では、2つの金属が関わる反応場を提供する新たな配位子(二核化配位子)として、2つのテトラメチルシクロペンタジエニル基(以下Cp基)またはフルオレニル基(以下Fl基)を連結させたチオラート配位子を考案した。これらの新規配位子を合成する反応経路として、既報の2,6-ジブロモベンゼンチオールを出発物質として用い、ケイ素基の転移を伴う3段階の反応を設計し、実際に設計通り合成できることを確認した。ただし、合成した新規二核化配位子はいずれも酸や熱に不安定であることが判明し、またCp基を持つ配位子は不揮発性の油状物質であったことから、単離精製操作が困難であった。一方で、Fl基を持つ配位子は結晶性が高く、単離および分子構造決定が可能であった。主にNMRスペクトルを用い、新規二核化配位子を同定した。 得られた新規二核化配位子への、コバルトの導入も達成した。リチオ化した配位子と臭化コバルトの反応から、硫黄原子と臭素原子が一つずつ金属間を架橋したCo-Co二核錯体が得られた。生成物は常磁性であったため、分光測定による同定は困難であったが、結晶構造解析により分子構造を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、2つの金属を近接させつつ取り込み、さらに空配位座の向きを揃えられる、新しい二核化チオラート配位子を設計・合成し、Co-Co二核錯体が生成することを確認した。新規配位子は、コバルトに限らず種々の遷移金属を取り込むプラットホームとして働くと期待でき、十分な発展性を備えている。また、合成したCo-Co二核錯体は、水素架橋型錯体へ誘導するか還元剤で処理することで、CO2やN2に代表される不活性小分子の変換反応へ利用できると期待できる。今後合成する予定の水素架橋型錯体は、領域内共同研究向けの試料として活用できる。
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今後の研究の推進方策 |
相対的に単離し易いと判明した、Fl基を持つ新規二核化配位子を主に用い、合成したCo-Co二核錯体とヒドリド試薬もしくはH2雰囲気下での還元剤との反応により、水素架橋型錯体へ誘導する。水素架橋型錯体が合成でき次第、領域内共同研究向けの試料として、他研究者へ提供する。領域内共同研究の推進に向けては、我々の独自化合物以外にも、他研究者による合成が困難な化合物合成を代行し、提供する形での連携も進める。さらに並行して、Fl基を持つ二核化配位子へ導入する金属元素の多様化を進める。特にコバルトと同じ第9族のロジウムとイリジウム、および第9族元素と類似した配位構造を取りやすい第8族元素のルテニウムや鉄を中心に検討する。
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