研究領域 | ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 |
研究課題/領域番号 |
21H00029
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
石河 孝洋 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, NIMS特別研究員 (40423082)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水素化物 / 超伝導 / 第一原理計算 / 進化的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
2020年6月に米国の実験グループが高圧力下のランタン(La)-水素(H)系で550ケルビン(277°C)の超室温超伝導を観測した。この時の組成や結晶構造などの詳細は解明されていないが、水素供給材のアンモニアボラン(NH3BH3)に含まれるホウ素(B)や窒素(N)がLa-Hと化合することによって超室温超伝導が引き起こされた可能性が考えられている。この超室温超伝導について更なる知見を得るためには、La-B-N-H系の高圧力下における安定組成と安定構造を決定することがまず必要となる。これまでの研究で、進化的アルゴリズムを用いた形成エネルギー凸包構築手法を独自に開発し、物質の安定組成及び安定構造の高効率探索が可能となった。これをLa-B-N-H系に適用させて550ケルビンの超伝導の真偽を検証するとともに、超室温超伝導発現のメカニズムを解明することが本研究の目的となる。 本年度は、形成エネルギー凸包構築手法を3元系La-B-H系に適用させて250万気圧下における安定水素化物の探索を行なった。まず、先行研究で報告されている2元系化合物のデータを基に250万気圧下における初世代の形成エネルギー凸包を構築し、これらの水素化物の構造データを使って凸包を11世代まで進化させた。その結果、凸包上に出現する安定な3元系水素化物としてLa4B32H、La2B16H、LaB4H2、LaB2H3、La2BH12、LaBH8、La2B3H30が得られ、また凸包までのエネルギー差が小さい準安定水素化物として、La2BH16、La2BH19、La4BH40、LaBH17が得られた。これらの超伝導転移温度を計算したところ、La2BH16で69ケルビン、LaBH8で50ケルビン、La2BH12で22ケルビンとなることを予測した。いずれもまだ報告されていない新しい水素化物超伝導となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の対象物質のひとつであるLa-B-H系について250万気圧下における安定相と超伝導相を探索し、これまでに見つかっていない新たな水素化物超伝導を発見したため、当初の計画以上に進展していると評価した。当初の計画ではLa-N-H系も調べる予定だったが、La-B-H系で予想以上の成果があり、実験グループとの共同研究へと発展しつつあるため、La-N-H系を次年度に持ち越した。
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今後の研究の推進方策 |
La-B-H系の高圧安定相と超伝導相を実験で検証してもらうため、低圧領域となる100万気圧下で同様の探索を実施する。これによって得られた結果を実験グループと共有し、共同研究に発展させる。また、次年度に持ち越しとなったLa-N-H系についても同様の探索を行い、新規水素化物超伝導を発見する。La-B-H系とLa-N-H系で得られた結果を統合して、La-B-N-H系における超室温超伝導の可能性について議論する。
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