研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
21H00033
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 建 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80431782)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気流体力学 / 原始惑星系円盤 / 磁気乱流 / 数値実験手法 |
研究実績の概要 |
原始惑星系円盤などの降着円盤では、細かな磁場構造や乱流といった小スケールの現象によるエネルギーや角運動量の輸送が、質量の降着や円盤風の駆動という大局的現象を支配している。降着円盤での輸送過程を理解するためには、小スケールの現象を解像しつつ大局的な効果も取り入れた数値実験を行うことが、非常に強力な手段となる。本研究では、降着円盤での磁気流体乱流機構の解明のため、大局的効果を取り入れつつ小スケールを解像することが可能な、円柱シアリング箱近似による数値実験手法の開発に取り組んでいる。 2021年度は、密度、速度、磁場の各物理量を平均量と摂動量に分け、別個に境界条件を課すという手法をコードに実装した。特に後者の摂動量が、回転の固有振動であるエピサイクル振動に起因する擾乱の動径方向両端でミスマッチとなり、これまで長時間安定な計算の阻害条件となっていた。この阻害要因に対処するため、両端で擾乱の振幅が異なる場合--例えば内側の振幅が外側の振幅より小さい場合など--、摂動量を境界条件として受け渡す際に、振幅を調整する処方箋を施した。さらに、両端での振動数のミスマッチに対しては、計算領域の中程の振動数の差が小さい場所の摂動量を利用することにより、振動数の差をできる限り抑制する方策を取った。その結果、局所円柱領域内で、定常降着構造が長時間持続する数値実験を行うことが可能となりつつあるというのが、2021年度末の状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度中に、数値実験による定常降着構造を実現した上で、複数のケースのシミュレーションを行うことが当初の目的であった。しかし、前項目で説明した摂動量の取り扱いで予想以上の試行錯誤が必要となり、当初予定以上の時間が掛かってしまった。そのため進捗が「やや遅れて」しまっている。
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今後の研究の推進方策 |
定常降着構造は実現できるようになったが、現状では計算領域両端での振幅の抑制を自動化できていない。2022年度はこの部分をできる限り自動化した上で、曲率の影響と背景磁場の強さが異なる場合の複数の場合のシミュレーションを行う。そして特に、従来の局所的な数値シミュレーションによる研究では調査できていなかった、円盤の丸み(曲率)の影響が降着円盤の磁気流体乱流の素過程に及ぼす影響を精査する。
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