銀河系外縁部の星形成領域の化学分析を通して、現在の太陽系近傍とは異なる原始的な銀河環境下にある星・惑星材料物質の化学的多様性の研究を行なっている。本年度は、前年度の研究において観測計画の策定を行なった銀河系外縁部の複数の星形成領域に対するアルマ望遠鏡観測を公募観測に提案し、これが採択された。当該観測プロジェクトでは、銀河系外縁部の5つの星形成領域に存在する16の原始星候補天体に対する分子輝線観測を行い、星間分子が豊富に存在する原始星の探査を提案した。観測ターゲットの選定においては、当該研究課題の中で研究協力者と共同で取得したジェミナイ南望遠鏡による高空間分解能・高感度近赤外線データ、および既存の分子雲サーベイデータを活用した。観測は年度後半に遂行された。データの初期解析の結果、銀河系外縁部の星形成領域にホットコアと呼ばれる化学的に豊かな高温の分子ガスが付随する原始星を発見した。銀河系外縁部では2例目となるホットコアの検出であり、過去の原始的な銀河環境における物質進化を探る上で貴重な天体サンプルの発見となった。アルマ望遠鏡を用いた銀河系外縁部の星形成天体の探査観測に係る一連の研究においては、中間・遠赤外線域における高空間分解能撮像観測データの必要性を強く認識した。今後の研究において取り組むべき観測課題である。以上の研究に加え、本年度は銀河系外縁部と同様の低金属量環境を有する系外銀河・小マゼラン雲のホットコアの観測研究や、海外の研究協力者との共同研究に基づく銀河系外縁部の星形成コアの化学進化に関する計算研究も行った。
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