現在までに4000個を超える系外惑星が発見されており,その中の大多数が地球半径の数倍程度の惑星であることがわかっている.これらの惑星は大気を持っているため,太陽系の地球型惑星に比べて半径が大きいことが示唆されている.これらの惑星大気の組成は惑星形成過程を反映していることから,宇宙望遠鏡などを活用して大気組成の推定が盛んにおこなわれており,それらの系外惑星が水素を主体とする原始惑星系円盤由来の大気(一次大気)だけでなく水成分など多様な分子種が大気中に存在することが示されている.本計画研究では,巨大衝突後の惑星大気の安定性について議論するために,岩石コアを持つ天体に対して巨大衝突の数値流体シミュレーションから解析し,衝突後に形成される惑星の内部構造を推定する.計算の結果,大気が大規模に流出した場合においては惑星大気部分にまで蒸発した岩石成分が混合することが示唆された.その一方で,惑星大気流出量が少ない場合は大気と岩石コアは混合せず層構造が維持されることもわかった.それらの計算結果を受けて,系外惑星の大気に含まれる分子種が天体のコア成分に由来する可能性を検討するため,岩石蒸気が一次大気と反応した場合の大気組成を計算し,その大気を持った天体が長期進化を経てどのような惑星大気を保持するかを調べた.岩石蒸気と一次大気が混合することによって水蒸気大気が生成し,その水蒸気大気が長期間維持される領域を示した.本研究の成果は天体衝突による大気組成の変動の可能性にも言及し,大気組成変動が天体衝突由来である場合には惑星コアの影響を大きく受ける可能性があることも示した.本研究の成果はThe astrophysical jornalに出版された.また,天体衝突に由来する岩石蒸気の拡散についての数値計算結果もThe astrophysical Jornalに出版された.
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