研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
21H00044
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 昭子 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40260012)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダスト / アグリゲイト / 原始惑星系円盤 / 衝突 / 付着力 |
研究実績の概要 |
不規則形状ダストの付着力に関して以下の研究実績を得た。 シリケイトダストの付着力:これまで数10ミクロンの大きさの隕石粒子の付着力の測定を行っていたが、超高速遠心加速装置を用いて数ミクロンの大きさの隕石粒子の付着力の測定を行った。その結果、数10ミクロンの粒子と数ミクロンの粒子で付着力に違いがないことを示した。このことは、不規則形状シリケイトダストの付着力がダスト表面の細かい(サブミクロンサイズの)凹凸に起因するという考察を支持する。さらに、得られた付着力の絶対値から推定した粒子表面の凹凸の曲率半径が、隕石を構成するマトリックス粒子のサイズと調和的であることを示した。隕石粒子表面の吸着水を除去するために粒子を加熱したのちに付着力を測定することも行い、吸着水の除去による付着力の増加が3-4倍であることも示した。これらの成果は、研究協力者である大学院生の博士論文研究として得られた。 ダスト塊の引張強度測定:不規則形状粒子の付着力を推定するために、近年、ダスト塊の引張強度測定が行われている。しかし、引張強度から付着力を推定することの妥当性については十分に議論されていない。そこで、先行研究で用いられているグラファイト粒子について、付着力、および、粒子を集めて塊にしたときの引張強度測定を行った。これにより、引張強度と付着力の関係についての基礎データを得た。 ダスト流中のクラスター:不規則形状粒子からなるダスト流中のクラスターの充填率をフラッシュX線を用いて測定し、クラスター充填率の粒子サイズ依存性についての実験データを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽系天体を構成する不規則形状シリケイト粒子の付着力についてサイズ依存性を明らかにし、また、シリケイトダスト表面の吸着水の付着力に対する効果を、直接的かつ定量的に示し、ダスト付着力の研究において大きな進展を達成することができた。当初予定していたクラスターどうしの衝突実験は滞っているが、ダスト流中の粒子クラスターの充填率についてはデータを蓄積しつつあり、定量的な議論を行う準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
ダストの付着力測定:前年度に引き続き遠心法を用いて測定を行う。炭素を多く含むダストについて付着力測定を行い、付着力の物質依存性について議論する。炭素を多く含むダストについても、表面吸着水が付着力に及ぼす影響を評価するために、ダスト加熱ありとなしの条件で付着力測定を行う。また、超高速遠心加速装置を用いて付着力測定を行い、炭素質ダスト付着力のサイズ依存性について調べ、前年度得られたシリケイトダストの場合と比較する。 ダスト塊の引張強度測定:炭素を多く含むダストを円柱形の塊に成形し圧裂引張強度を測定する。ダストサイズと空隙率の観点で整理し、引張強度についての経験則を導く。さらに、小天体由来の粒子の強度測定結果(文献値)との比較を行い、これらの粒子の強度獲得過程や母天体形成過程について議論する。 ダストクラスターの衝突実験:ダスト形状とクラスター充填率の関係について追加の実験データを得て結果を整理し議論する。不規則形状粒子からなるクラスターどうしの衝突実験について見通しを得る。 以上の研究成果を投稿論文にまとめる。
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