今年度は、ダスト粒子の付着力測定とダストクラスターの成長過程について研究協力者(長足友哉氏)とともに以下の成果を得た。 付着力測定:前年度に引き続き遠心法を用いて粒子の付着力測定を行った。有機物を主体とする粒子の付着力測定を行い、同サイズの隕石破片の付着力の数倍大きい付着力を持つことを明らかにした。顕微鏡観察によると、有機物粒子の表面の凹凸スケールが、隕石破片よりも桁で大きい。このことが、隕石破片の付着力より数倍大きい付着力の原因となっている可能性が考えられる。一方、前年度に引き続き、超高速度遠心加速装置を用いた隕石粒子の付着力測定を行い、粒子に作用する模擬重力と付着力の関係についてのデータを取得し、解析を進めている。さらに、前年度に明らかにした隕石破片の付着力が破片サイズによらないこと、加熱により破片の表面水を減らした場合に付着力が標準状態の数倍となることを踏まえ、小惑星表面粒子の付着力について議論した論文を査読付英文誌に出版した。 ダストクラスターの衝突実験:自由落下するダスト流中にできるクラスターの充填率と、クラスターを構成するダストサイズ分布の関係についての実験データを得て解析を行った。クラスター充填率はダストサイズ分布(累乗分布とみなしたときのべき指数)に依存するのに対し、クラスター充填率の変化速度(進化のタイムスケール)は、ダストサイズ分布にはよらず、系に含まれるダストの最小サイズに依存する傾向を見出した。
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