公募研究
銀河系における(特に太陽系近傍)分子雲から原始星がどのように形成されるかという問題については近年の観測技術の発達によりその原始星形 成極初期を除いては概ね理解されるようになった。星間ガスの大局的な流れ、あるいはガス雲同士の衝突により局所的に0.1 pc程度の幅を持つ高密度な紐状分子雲(以下、フィラメント状分子雲)が形成され、その後重力の力により分裂/収縮し、原始星形成に至るという描像である。一 方で遠方銀河の観測に目を向けると、現在の銀河系では見られないような高い効率で星が形成されており、少なくとも赤方偏移2程度までは増加傾向である。遠方銀河の観測は現在/将来の観測技術を以ってしても個々の星形成領域は分解できない。そこで本研究では、太陽系から最も近い低金属量銀河である小マゼラン雲を観測することにより、そこに存在する分子雲を観測し、内部での星形成活動を理解する。ALMA望遠鏡のデータは通常、観測プロポーザルが採択された提案者に占有期間(1年)が与えられるため、それ以外のグループが後出しでアーカイブデータに着手することによる競争のリスクは大きい。そこで我々がまず比較的そのリスクを最小限に抑えられるデータに着目し、小マゼラン雲北側をカバーするデータの解析を進めた。その結果、小マゼラン雲においてはCO分子輝線が分子雲の高密度部分のみをトレースすることなどを見出し、これらのデータをプレゼンテーションする論文を出版した(Tokuda et al. 2021, ApJ, 922, 171)。
2: おおむね順調に進展している
大規模ALMAアーカイブデータを順調に出版できたため。
上記のアーカイブデータに基づいたデータ解析論文は現在2本目を投稿中である。まずは令和4年度の早期にこの論文の受理を目指す。また大小マゼラン雲のいくつかの天体をより高解像度で観測するALMA望遠鏡の観測計画を提出した。採択されれば、低金属量環境下でのフィラメントの有無、およびその性質について迫ることが可能となる。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (8件)
The Astrophysical Journal
巻: 922 ページ: 171~171
10.3847/1538-4357/ac1ff4