研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
21H00050
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
木村 宏 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 研究員 (10400011)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダスト / メゾスコピック物理 / 衝突破壊 / スパッタリング / 星間物質 |
研究実績の概要 |
本研究では、星間ダストの破壊タイムスケールをメゾスコピック物理に基づき研究期間内に明らかにすることにより、星間ダストの実在根拠を解明することを目的としている。 2021年度は、ダスト同士の衝突によるダウンサイジングにメゾスコピック物理を適用し、従来の破壊モデルにおける問題点を解決することにより新たなモデルの構築を試みた。これまでの星間ダスト衝突破壊モデルでは、ダスト同士の衝突により壊滅的な破壊が起きる条件として、衝撃波による引張張力が引張強度を超える場合としている。本年度の研究では、ダストを分子の集合体として扱うことにより、引張強度を解析的な式で表現することに成功した。この解析解は破壊力学におけるグリフィス理論や弾性力学におけるJKR理論とも調和的であり、星間ダストの組成と考えられる H2O や SiO2 や C を用いた引張強度の実験結果や分子動力学シミュレーションの結果を再現できることが分かった。特に、空隙率依存性やサイズ依存性を良く説明できるが、天然物質でできたダストのみならず人工物においてもワイブル係数の違いで説明できるという、適用範囲の広い式になっていることも確認できた。また、準静的な場合と動的な場合では引張強度が異なるが、ひずみ速度依存性を考慮することにより、両者の違いが説明できる。さらに、クラックの無い場合の理想的な引張強度も、導出した式を用いてワイブル係数を無限大にすることにより見積もることが出来る。 2022年度の計画に関する星間ダストのサイズ分布に関しては、10 au (天文単位) でのカッシーニのその場測定データを 1~5 au でのユリシーズのその場測定データと組み合わせることで、より良い精度でのサイズ分布のモデル化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
破壊の挙動に関する実験や分子動力学シミュレーションは、多種多様な分野で行われているが、計画当初に把握していたデータ量と比較にならないほど膨大なデータの存在が明らかになり、全てのデータを精査するのに予想以上の時間を費やした。そのため、スパッタリングによる破壊のモデル化が予定通りには進めていない。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度で予定通り進まなかった計画は2022年度に行うが、2022年度計画の一部を2021年度に先取りした事も合わせると、最終的には予定された計画は全て遂行されると期待される。
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