研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
21H00054
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
馬場 淳一 国立天文台, JASMINEプロジェクト, 特任助教 (90569914)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 太陽系 / 天の川銀河 / 数値シミュレーション / Gaia / 銀河化学進化 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、申請者独自の天の川銀河の非軸対称構造の動力学モデルに基づき、太陽系及び太陽系母星団の数値シミュレーションを行うことで、太陽系の起源を天の川銀河進化の枠組みで理解することである。この計画のために以下の研究に取り組んだ。 (1) 太陽系の軌道移動の素過程を理解するためのテスト粒子シミュレーションを行った。申請者らの先行研究 (Tsujimoto & Baba 2020) に基づく銀河化学進化の描像に基づくと、太陽系の元素組成から太陽系は現在の位置よりも2~3 kpcほど内側の銀河円盤の領域で誕生したと期待される。このような状況で太陽系が46億年の時間で、いつ・何によって・どのように軌道してきたのかを調べるために、動的非軸対称銀河構造の外場モデルを構築し、テスト粒子シミュレーションをおこなった。その結果、太陽系は渦状腕は古典的な密度波モデルではなく、動的渦状腕モデル (Baba et al. 2013) である場合、かつ棒状構造のパターン速度が減速する場合に、二種類の共鳴捕捉によって離心率を大きく増加させることなく移動できることを示した(Baba et al. 論文執筆中)。 (2) 上記の描像に基づき、太陽を模したテスト粒子を粒子数1000から10000粒子程度の太陽系母星団に置きかけた自己重力N体シミュレーションを行った。この計算に基づき、太陽系母星団は上述の軌道移動過程の間、銀河潮汐場の変化により破壊され、太陽兄弟星が銀河系内に拡散する過程を解析した。その結果、プレリミナリーではあるが、太陽兄弟星は棒状構造の共回転半径付近に共鳴捕捉されて分布する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の一つである動的銀河モデルにおける太陽系軌道移動に関する新たな知見を定量的に示すことができた。この結果は現在論文としてまとめている段階である。次の段階として、このモデルに基づくN体シミュレーションで太陽兄弟星の拡散過程を調べることが必要であり、それが本研究の最終目的である。これに関してもプレリミナリーな計算で示唆を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標である太陽系兄弟星の拡散過程の理解と位相空間分布の理論予測のために、初年度のテスト粒子計算の結果に基づいて太陽系母星団のN体シミュレーションを行う。現在、特定のモデルに対して暫定的な結果を得ている段階であるが、初期の星団位置や星団自体のパラメータ(質量・サイズ・密度など)に対する結果の依存性を調べるためのパラメータスタディが必要である。今後、このようなパラメータスタディに取り組み、その結果を論文としてまとめる予定である。
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