研究実績の概要 |
本研究では観測と理論の両面から星形成の普遍性と多様性の調査を行っている。下西准教授, Zhang研究員, 徳田特任助教等との国際協力のもとで、ALMA観測を用いて大小マゼラン雲における大質量原始星サーベイ観測を進めた。特に今年度は小マゼラン雲における原始星アウトフロー、ホットコアの初検出を報告することができた (Tokuda et al. 2022; Shimonishi et al. 2022)。また、更なるデータ解析の結果、銀河系と大マゼラン雲における原始星アウトフローの物理特性は良く似ているが、小マゼラン雲の高光度原始星においてCO分子アウトフローは極端に弱いことが発見された (Tanaka et al., in prep.)。この結果は、小マゼラン雲程度の金属量環境(~0.2太陽金属量)では、アウトフロー駆動機構が働かないか、CO分子が非常に効率的に解離されていることを示唆しており、物理と化学の両面から更なる調査が必要となる。 一方、理論面からは、松木場研究員等との共同研究では、輻射流体力学シミュレーションを用いた円盤自己重力安定性についての詳細な研究を行い、低金属量環境では重力不安よる激しい円盤分裂が発生することが明らかになった (Matsukoba et al. 2022)。さらに山室氏, 奥住准教授との共同研究から、円盤内ダスト成長によって重力安定性や電離フィードバックの性質が影響をうけることもわかってきた。これらの成果により、初期宇宙に似た低金属量における大質量星形成の物理・化学過程の普遍性と多様性に新たな知見が得られつつある。
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