本研究課題は、観測ビジビリティのみをイメージングする新手法を用いて、衛星が形成される母体である周惑星円盤の系統的探査を、ALMAのダスト連続波のデータアーカイブを用いて行うことが目的である。データ解析の結果、有意なシグナルは見つからなった。これまで確認されている周惑星円盤は、2021年に報告されたPDS70c惑星に付随する周惑星円盤のみである。そのシグナルは弱く、他の周惑星円盤も同様の強度のシグナルと仮定すると、典型的な星形成領域で周惑星円盤のシグナルを有意に検出するには現実的なALMAの観測時間では厳しいことが予想される。解析手法のさらなるアップグレードが必要だろう。 研究期間内に本研究に関連する2つの査読論文を発表した。どちらも、本研究課題で用いる新手法を実際の観測データに適応し、有効性を実証した成果である。本研究課題遂行のためのキーポイントは、明るい軸対称な原始惑星系円盤に埋もれた、暗いポイントソースである周惑星円盤を効率的に取り出すことにある。データのキャリブレーションの過程で、見かけの非対称性が生じることがあり、この偽の非対称性と区別する必要がある。本手法を使えば、軸対称な成分をキャンセルすることが可能である。また、偽の非対称性もキャンセルすることが可能である。そこで、本手法の実効性を示すために、弱い非対称性のある原始惑星系円盤を持ったおうし座DM星とおうし座ZZ IRS星に本手法を適応した。これらの非対称性は比較的弱く、その存在の信憑性は乏しかった。本手法を適応した結果、軸対称成分を引き算して、非対称性成分を取り出すことに成功した。また、これまで知られていなかった新たな非対称性を発見することが出来た。本手法の有効性が示されたと言える。
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