本研究の主目的は、ブレーザーと呼ばれる活動銀河核(BL Lac型ブレーザー及びFSRQ型ブレーザー)に対して、口径8.2mすばる望遠鏡により取得した高解像度撮像データを用いて、その母銀河光度の測定から銀河中心超巨大ブラックホール質量を求め、ブレーザー天体のブラックホール質量の多様性や、その母銀河と相対論的ジェットとの関連を探ることにある。 ブレーザーカタログの再吟味を行い、使用している公開カタログ情報の一部、具体的にはBL Lac型ブレーザーの赤方偏移情報の誤りを修正した。 また、すばる望遠鏡 Hyper Suprime-Cam (HSC) データが新しく内部公開され、研究対象天体が増えたことに伴い、解析手法をアップデートした。具体的には、他望遠鏡で取得された光度曲線を用いて、ブレーザー成分が比較的暗い、つまり母銀河成分が相対的に明るい時期の天体に絞った、より信頼性の高い研究を遂行することとした。これにより、高精度かつ信頼性の高い母銀河光度の測定が可能となり、その結果得られるブラックホール質量の精度・信頼性も高まる。また、高エネルギーニュートリノ事象IceCube-170922Aの起源天体として同定されたブレーザーTXS 0506+056に対して独自に取得したHSCデータの解析を完了させた。 データ解析は90%程度完了し、得られた可視光多バンドでの母銀河情報を用いて母銀河星質量及びそこから得られるブラックホール質量を算出を行った。これらをまとめた査読論文を執筆中である。 さらに、すばる望遠鏡IRCSおよび補償光学AO188を用いた近赤外線におけるブレーザー1天体に対する撮像・分光データを取得した。特に分光データについては、銀河中心部の、ブレーザー成分の卓越した領域を避けたスペクトルを生成することにより、母銀河起源の吸収線の検出から赤方偏移を正確に決定するという新しい試みである。
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