研究領域 | ニュートリノで拓く素粒子と宇宙 |
研究課題/領域番号 |
21H00070
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮武 広直 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (20784937)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 観測的宇宙論 / 銀河団 / 重力レンズ / 多波長解析 / ニュートリノ |
研究実績の概要 |
前回の公募研究でPhysical Review Letters誌に投稿した、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam(HSC)で検出されたz~4の大規模超遠方銀河サンプル(ライマンブレイク銀河)のPlanck衛星のデータを用いたCMB重力レンズ効果測定及び宇宙論パラメータの制限に関する論文の査読結果は批判的なものであり、宇宙の大規模構造による系統誤差のテスト、宇宙論パラメータの妥当性など、多くの再解析を行ない、再提出をした。その結果、2022年度に入ってからであるが、受理の通知がきた。来年度は同様のライマンブレイク銀河サンプルとAdvanced Atacama Cosmology Telescope (AdvACT)のCMBデータを用いてCMB重力レンズ効果の解析を行う。AdvACTのデータの雑音レベルはPlanckのそれに比べて圧倒的に小さく、精度のよいCMB重力レンズ効果の測定が可能となる。 また、z~4のライマンブレイク銀河サンプルから作成した超遠方銀河団サンプル(HSC-HZ)のCMB重力レンズ信号の測定を行うための前段階として、超遠方銀河団サンプルへの近傍銀河団の混入率を調べたが、近傍銀河団の混入率が非常に高く、現在原因を調べているところである。 AdvACTでスニヤエフ・ゼルドビッチ効果を用いて発見された銀河団サンプル(ACT-SZ)とHSCで発見されたz<1における近傍の銀河団サンプル(HSC-LZ)の重力レンズ信号は、HSCで観測された銀河像を光源として用いる弱重力レンズ効果を用いて測定を進めた。現在は測定の系統誤差のチェックを進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HSC-HZサンプル以外の各サンプルの重力レンズ信号の測定が順調に進んでいるため。HSC-HZサンプルのCMBレンズ測定ができなくても、ライマンブレイク銀河サンプルを用いれば高赤方偏移の大規模構造の情報を得ることができるため、問題なく研究計画を遂行することができる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は各サンプルの重力レンズ信号を用いてニュートリノ質量に制限をつけることを目指す。HSC-LZ及びACT-SZサンプルは銀河団の質量関数と重力レンズ信号を用いて、ライマンブレイク銀河サンプルは重力レンズ信号とクラスタリング信号を組み合わせることでニュートリノ質量に制限をつける。これは異なる時代の大規模構造の情報を用いた初めてのニュートリノ質量の制限となる。
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