研究実績の概要 |
まず、繰り込み可能な超対称SO(10)大統一理論について、標準模型の湯川結合が、10, 126bar, 120表現ヒッグス場と16表現物質場との湯川結合Y_10, Y_126, Y_120から導出される模型を考えた。この模型において、Y_10, Y_126, Y_120のフレーバー構造が、標準模型湯川結合とニュートリノ振動のパラメータを正しく再現しつつ、dimension-5陽子崩壊を抑制して、陽子寿命の実験的制限に抵触せずに超対称粒子の質量スケールを下げられる可能性を解析した。特に、ニュートリノ微小質量がType-2シーソー機構から導かれる場合では、dimension-5陽子崩壊の抑制度と、ニュートリノ振動のディラック位相などとの相関があることを数値解析により明らかにした。 次に、超対称Flipped SU(5)大統一理論では、通常、colored Higgsinoが媒介する陽子崩壊(dimension-5陽子崩壊)は強く抑制され、観測できない。しかし、本給では、同理論の枠組みの中で、この抑制が弱まる可能性を指摘した。そして、dimension-5陽子崩壊が「ほどよく」抑制され、高々10TeV程度の超対称性粒子質量スペクトルの下で、SuperKamiokande実験による陽子寿命の現在の制限に抵触せず、かつ将来のHyperKamiokande実験において陽子崩壊が発見可能な模型を提唱した。さらに、陽子崩壊の複数のモードについて、分岐比の比の予言を行った。 また、ゲージ・ヒッグス統一理論で、「ヒッグス場4点結合が消滅するエネルギースケール」と、「トップクォーク湯川結合」と「弱い相互作用のゲージ結合定数」が一致するエネルギースケールとが同一となり、かつこのスケールがコンパクト化スケールと同定できる模型を提唱し、コンパクト化スケール、トップクォーク質量の精密値等の予言を行った。
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