超伝導検出器の開発を中心に行った。申請者が独自にデザインしたKID(Kinetic Inductance Detector)の改良を行った。非熱的フォノンに感度を有する検出器部分(以降パット呼ぶ)を1mm角まで拡大し、インジウム標的をとりつける面積を最大化した。その設計をシミュレーションで確認し、共振ピークが確認できた。産総研のQfubが再稼働を始め、今年度に超伝導検出器の作製を再開させることができた。そこで、新しいKIDのデザインを作成し、実機を制作した。また、インジウム標的をささえるサファイアマスクを、レーザー加工機で製造した。検出器の評価を行う予定であったが、これまで使用していた0.3KHe-3ソープション冷凍機が、施設引っ越しのためしばらく利用できなくなった。その代わり、フランスのパリ・サクレ―大学およびQUPで希釈冷凍機を利用させて頂くことになった。100mKまで冷却でき、共振ピークを確認できた。 次に、トリウムを含むランタンマントルを冷凍機に入れて、微弱な放射線を照射し、信号の確認を進めた。PCから直接操作可能なオシロスコープを購入し、ヘテロダイン形式のマイクロ波回路を組むことにより、放射線信号の検出に成功した。超伝導検出器として、NbとAlの両方を作製し、Nbでできた検出器は予想通りの反応を示し、時定数もNbの超伝導の性能から決まる性質と一致した。一方、Alで作製した検出器は、信号を見ることができなかった。おそらく、エッチングするときに使用した薬品が、Al薄膜に細かい傷をつけたのではないかと考えており、エッチングの手法を改良している。 本研究のアイデアと進捗状況を報告するために、2023年6月に韓国で行われた、超伝導検出器に関する国際会議でポスター発表を行った。
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