ニュートリノトライデント過程の測定は、新物理の兆候を捉え、その性質を探る方法のひとつとして知られている。これまでに、CHARM-II実験、CCFR実験などで測定が行われてきたが、将来はDUNE実験やIceCube実験による高統計の探索も期待されている。様々な模型で適用可能な定式を作成し、放出される荷電レプトン対の運動量分布などを定量的に計算することで新物理の詳細な情報を抜き出すことが可能となる。令和3年度には、かつて研究代表者がLμ-Lτ模型への適用を念頭に作成した定式を、他の模型でも適用可能となるよう拡張を進めた。それに引き続き、令和4年度は具体的なゲージ化U(1)模型に注目し、共同研究者と共にニュートリノトライデント過程による制限について考察した。 ニュートリノトライデント過程は、新物理の中でも特にミューオンやニュートリノと結合する新粒子の探索において有効である。これらの新物理はニュートリノ質量生成とも関連し、他のレプトンフレーバーに関する新物理探索から制限を受けることが考えられる。令和4年度は、ミューオンが関連する新物理過程である、「ミューオン原子におけるミューオン電子転換過程」、「ミューオニウム反ミューオニウム転換過程」に関する研究を行い、論文と学会発表により成果を公表した。いずれの成果も本研究の目指す「新物理のパラメータ決定」に向けて大きく貢献するものであり、将来の新物理探索を行う上で有益となることが期待される。
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