ニュートリノにおけるCP対称性の破れの発見を目指し、ニュートリノフラックスに起因する不定性を低減する必要がある。これまで主要な系統誤差であったハドロン反応に伴う不定性が5%程度まで低減され、標的や電磁ホーンの設置位置の不定性や電磁ホーン冷却水における二次粒子散乱の影響など、これまでは相対的に小さかった系統誤差についても、今後さらに低減する必要性が生じる。標的や電磁ホーン近傍における二次粒子測定は、高放射線環境下でビームモニタを安定に動作させることが困難であったが、高放射線環境下でも安定に動作する高精度温度センサを用いて、二次粒子の物質でのエネルギー損失による温度上昇を精密に測定することで、二次粒子フラックスの測定が可能となる新たな検出手法を開発してきた。 令和4年度においては、新たに開発した大強度ビーム向け電磁ホーン2台に対して、温度センサー合計32本分の配線作業を行った。また、電磁ホーンと支持モジュールとの遠隔着脱部に改良を加えて、より操作性・信頼性を向上させた。支持モジュール内での配線も含めて、遠隔着脱部の設置を行い、実際に使用するものにおいて、十分仕様を満たすことを確認した。その後、温度センサーを配線した新型電磁ホーン2台の設置を完了させた。設置後は、ヘリウム容器内及び地下から地上部までの配線も完了した。配線完了後に測定器のセットアップを実施し、配線した32本の温度センサーの信号読み出しを確立した。それに加えて、測定器の遠隔制御及びデータ収集の設定を行い、全システムが正常に動作することを実証した。ビーム実験に向けた全ての準備を完了したが、令和4年度中のビーム運転が延期されてビーム運転時のデータ取得が出来なかった。しかし、ビーム無しで収集した温度データから、熱電対による温度計測に比べて格段に測定精度が向上したことは、実証することが出来た。
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