研究領域 | ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製- |
研究課題/領域番号 |
21H00087
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 賢一 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20335996)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キンク強化 / キンク変形 / MAX相セラミックス / ポーラス / 配向制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、MAX相セラミックスを研究対象として、配向ポーラスおよび緻密焼結体を用いて種々の温度におけるキンク強化機構を解明するとともに、キンク強化型層状ミルフィーユ材料創製のための設計指針を提案することを目的とし、以下の項目について検討した。 (1)配向ポーラスTi3SiC2焼結体の作製手法の確立とキンク導入条件の検討 ポリメタクリル酸メチル粒子とTi3SiC2粒子を混合したスラリーを用いて強磁場中スリップキャストした成形体を放電プラズマ焼結によって焼結させた。得られた焼結体を組織観察した結果、配向と気孔形成の両立が確認できた。また、この配向ポーラス焼結体を高温でキンクが導入されやすい方向からの圧縮負荷を施した結果、多数のキンクが導入され、それらの結晶方位解析の結果、配向ポーラス焼結体中のキンク境界の回転角が配向緻密焼結体に導入されたキンク境界よりも大きくなることを見出した。 (2)キンク強化型Ti3SiC2焼結体の強化機構の解明 作製手法を確立した配向ポーラス焼結体と配向緻密焼結体、およびキンクを導入した配向焼結体を用いて、底面すべりが活動する応力負荷方向からの高温圧縮試験を行い、キンク強化の有無を評価した。その結果、キンクを導入した配向焼結体において、加工硬化挙動に差が生じることを示した。また、試験片に導入される層間剥離(デラミネーション)の量によって0.2%耐力に影響を与えることも示唆された。 以上の結果より、MAX相セラミックスにおいてもキンク強化が生じることが示唆された。今後は、変形組織のTEM/STEM観察を行い、強化機構の解明に繋げるとともに、別の組成や構造のMAX相セラミックスについても同様の評価を行うことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究開始時に計画していた配向ポーラス焼結体の作製手法の確立については、目的を達成しており、得られた焼結体を使用してキンク強化の有無について実験的な検討を行っている。また、高温でのキンク強化が見出される結果を得ており、その機構解明に向けた組織評価についても進めているところである。室温でのキンク強化の発現については、検討が必要であるが、評価手法については、薄片試料を用いた曲げ試験を想定しており、予備試験も実施済みである。 以上のことより、現在までの進捗状況は、「おおむね順調に進展している。」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
高温でのキンク強化発現が示唆された配向Ti3SiC2焼結体においては、変形組織の観察を重点的に行うことを計画している。結晶粒内の変形度合いを評価する上で、SEM/EBSDを用いた結晶方位解析手法を、導入された欠陥の状況を評価するためにTEM/STEMを用いて実施する。また、キンク導入量を変化させることでキンク強化量に違いが生じるか否かについても実験的な検証を行う。 さらに、Ti2AlCMAX相セラミックスについても配向焼結体の作製手法の確立と、諸特性の評価を実施する。特にTi2AlCMAX相セラミックスでは、酸化特性にも特徴があることが知られているため、力学特性も含めて配向方位依存性について評価することを計画している。
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