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2021 年度 実績報告書

ナノ電子プローブ分光法によるミルフィーユ型Mg合金の電子構造の解明

公募研究

研究領域ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製-
研究課題/領域番号 21H00089
研究機関東北大学

研究代表者

佐藤 庸平  東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70455856)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2023-03-31
キーワードミルフィーユMg合金 / 電子エネルギー損失分光法
研究実績の概要

遷移金属元素と希土類元素を微量添加したMg合金は、特異な力学特性を示し次世代軽金属材料として注目されている。ZnとYを高濃度に添加したMg合金では、硬質層内部でZn6Y8クラスターの形成が確認されている。一方、微量添加Mg合金では、硬質層がまばらに分布した内部でクラスターの形成は確認されていなかった。本研究課題では、電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて硬質層の電子構造解析を行い、STEM像観察、蛍光X線ホログラフィー、光電子分光測定の結果と合わせて、硬質層中の原子配置を明らかにすることを目的としている。
ナノ電子プローブを用いてMg99.2Zn0.2Y0.6の硬質層のみからZn-L2,3吸収端およびY-L2,3吸収端の測定を行い、Zn/Yの存在比を評価したところ、Zn6Y8クラスターを有するMg75Zn10Y15に比べてZnが減少していることが明らかになった。この結果は光電子分光による評価と一致した。この組成比評価と、蛍光X線ホログラフィーおよびSTEM像解析の結果を統合すると、Mg3Zn3Y8クラスターの形成が予想された。硬質層中に予想したクラスターが存在するならば、非弾性散乱電子の散乱角度方向によってEELSスペクトルに異方性が現れることが考えられるため、原子分解能での角度分解EELS測定を行った。その結果、Y-L3吸収端のY-4d軌道に対応するピーク構造が、非弾性散乱電子の散乱角度方向(q//ab面方向とq//c軸方向)においてスペクトルのピーク幅に違いが観測され、異方性を確認することに成功した。この異方性の観測により、Mg合金中の硬質層中では予想したMg3Zn3Y8クラスターの形成が妥当であることが結論づけられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

原子スケールの電子プローブを用いた角度分解EELS測定の試みは本研究が初めてであり、原子スケールの層状構造においてもスペクトルの異方性の観測に成功したことは、原子サイズにおいても電子構造の異方性の情報を得ることが可能であることを示している。原子分解能EELS測定結果を、STEM像観察、蛍光X線ホログラフィー、光電子分光測定の結果と合わせることで、硬質層で形成されるクラスター構造を予想し、その妥当性を検証することに成功した。その結果、長年の懸案事項であった硬質層中の原子配列を実験的に明らかにすることに成功した。本研究課題の目的をほぼ達成していることから、本研究課題はおおむね順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

Zn・Y微量添加したMg合金のZn-L2,3吸収端およびY-L2,3吸収端の観測を行い、Y-L3ピークの異方性の観測に成功した。今後は、これらスペクトルの異方性がMg3Zn3Y8クラスター構造に特徴的であるのか明らかにするため、第一原理計算によるスペクトルシミュレーションを行う。
また、硬質層中の原子構造を明らかにすることに成功したが、何故このような構造がMg合金中で安定的に存在し得るのかはいまだ明確ではない。合金の構造の安定化の議論では、その電子構造がフェルミ準位近傍で状態密度が減少する擬ギャップ構造を形成することで、エネルギー的に安定な構造を形成することが知られており、Mg合金においてもそのような電子構造を形成しているとの予想がされている。Mg合金のフェルミ準位近傍での電子構造を明らかにするため、Zn-L23吸収端およびY-L23吸収端だけでなく、Mg-K吸収端の測定を行い、フェルミ準位近傍の状態密度分布の実験的な解明を行うことで、擬ギャップ構造の存在の有無を明らかにする。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] EELSによるMg-Zn-Y合金の 異方的電子構造の研究2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤庸平、寺内正己、江草大佑、阿部英司
    • 学会等名
      日本物理学会年次大会

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公開日: 2022-12-28  

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