研究領域 | ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製- |
研究課題/領域番号 |
21H00092
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江草 大佑 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (80815944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マグネシウム合金 / キンク変形 / SEM / 変形その場観察 / キンクパターンニング |
研究実績の概要 |
ミルフィーユ構造材料は結晶回転を伴うキンク界面の形成(キンク形成)により材料強度が著しく向上する.このキンク強化は転位運動を阻害するキンクの界面効果として捉えることができるが,その物理的由来は十分には理解されておらず,また強化に寄与するキンク界面構造は明らかでない.本申請課題では,SEM直接観察によりキンクの階層的組織構造を回転変形に伴って導入されるひずみ場の観点で統一的に表現し(キンクパターンニング),キンク強化に資するキンク界面の構造的特徴を明らかとする.また,高温加工における動的な組織発展過程を調査し,キンク形成を効率的に誘起するミルフィーユ構造および加工条件に関する指針を提案する. 令和3年度は「室温その場圧縮におけるキンク形成過程の調査」、「キンク界面構造解析による組織評価手法の構築」に取り組み、その場圧縮実験により基礎的な実験データを取得するとともに、変形に伴う特徴的なキンク組織発展現象(二次キンク等)を確認した。 令和4年度は「高温その場圧縮におけるキンク形成過程の調査」、「キンク組織定量評価手法(キンクパターニング)の構築」にそれぞれ取り組み、キンク強化発現に寄与するキンク界面の構造的特徴を見出すことを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和3年度は下記に取り組み、当初の想定以上の進展を得た。 ・室温その場圧縮におけるキンク形成過程の調査 圧縮その場観察用の環境を構築するとともに、キンク形成過程観察可能な実験条件を明らかとした。また観察結果より、キンク界面の形成・成長過程に関する基礎的な実験データを取得し、変形に伴うキンク密度・キンク形態の変化が同時に進展することを明らかとした。 ・DS材/MFS材におけるキンク界面構造解析による組織評価手法の構築 圧縮その場観察および圧縮後試料のSEM/TEM/STEM観察を通じて、ナノ~ミクロスケールにおけるキンク界面構造を解析した。特にDS材においては、変形初期に形成されたキンク界面を起点とする二次的な界面の形成(二次キンク)が確認され、キンク組織発展に寄与していると考えられた。MFS材においては、高温変形にともなって導入されたキンク界面構造を予備的に調査し、変形前後の組織比較からキンク界面形成に伴ってミルフィーユ組織中の硬質層が変形中に増加していることを確認した。この結果は、高温加工においてっはキンク界面形成とミルフィーユ組織の発展が連関して進展していることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、令和4年度は以下の課題解決に取り組む ・高温その場圧縮に於けるキンク形成過程の調査 室温その場圧縮試験結果より、流動応力が低下する高温圧縮においても同様の実験が実施可能であることが期待できる。令和3年度に導入した圧縮試験機に昇温機能を導入するとともに、その場観察可能な実験条件を明らかとする。 ・キンク組織定量評価手法(キンクパターニング)の構築 室温/高温およびDS材/MFS材のそれぞれで観察されたキンク界面構造にもとづいて、キンク組織の評価に有効な微視的因子を明らかとする。また、キンク強化とキンクパターニングの関係を調査するために、キンク組織の異なる種々の材料に対して力学特性評価を実施し、強化に資するキンク界面の構造的特徴を明らかとする。
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