研究実績の概要 |
昨年度までに提案した点過程モデルによるAE信号解析の手法を、様々なミルフィーユ構造材料に適用した。具体的には、ナノスケールで硬質相と軟質相が積層する結晶構造型ミルフィーユ材料(LPSO-Mg合金)とマイクロメートルスケールで硬質・軟質相が積層する微視組織型ミルフィーユ材料(Al/Al2Cu共晶合金, Ti-10Cr合金)に提案手法を適用した。またAE信号の原波形解析とRank-1接続を組み合わせて、材料内部で生じるキンク変形の回転角度を統計的に解析した。得られたキンク帯の角度や変形にかかる時間は、高速度カメラによる観察結果と一致した。解析結果から、結晶構造型ミルフィーユ材料(LPSO-Mg合金)では、高速にキンク帯が生成し、それらは相互作用して後続のキンク生成に影響を与えることがわかった。またフラクタル解析を行った結果から、これらのキンク生成は、規模、空間的形状、発生時間間隔において、自己相似性を持つことがわかった。一方で、微視組織型ミルフィーユ材料(Al/Al2Cu共晶合金, Ti-10Cr合金)におけるキンク変形は、発生・進展が比較的遅く、数秒かけて生成し、各事象が独立に発生することが示唆された。以上のように、LPSO型Mg合金におけるキンク変形は、他の金属型ミルフィーユ材料とは動的な変形挙動が根本的に異なることが示唆された。また本研究で提案された手法は、材料内部の微視変形を動的に捉えるために有効であり、今後の他の材料研究にも応用できる点で意義が大きい。
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