研究領域 | ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製- |
研究課題/領域番号 |
21H00098
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
宮崎 秀俊 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10548960)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 長周期積層構造 / マグネシウム合金 / 電子構造 / 硬X線光電子分光 |
研究実績の概要 |
長周期積層構造を有する遷移金属とレアアースを添加したMg合金は、超高強度、難燃性、軽量という優れた特性から次世代軽量構造材料として注目されている。優れた機能性は、添加された元素がMg母材中で分散し強固な局所クラスターを組織的に形成するためと考えられており、この局所クラスターの形成過程および配列過程を明らかにすることができれば、更なる機能性の向上、レアアースの使用量の低減方法の提案につながると期待できる。しかしながら、最近、作製に成功したMg99.2Zn0.2Y0.6合金においては、Zn/Yの局所クラスターの原子配列は十分に理解されていないのが現状である。そこで、本研究では、構成元素の電子状態を直接観測可能な硬X線光電子分光法を用いることにより、Mg99.2Zn0.2Y0.6合金における構成元素の内殻電子状態を詳細に観測し、局所クラスターの原子配列に関する知見を得ることを目的として研究を行った。 超高真空中で表面をダイヤモンドヤスリで磨いたMg99.2Zn0.2Y0.6合金における広範囲の硬X線光電子スペクトルを測定した結果、構成元素の内殻電子状態の他に僅かに酸素および炭素の内殻電子が観測された。その存在量は僅かであることから、表面やすり掛けと硬X線を用いた高い励起光エネルギーの光電子分光測定により、バルク内部の電子状態を観測可能なことが明らかになった。以上の結果より、表面処理方法としてダイヤモンドやすりによるやすり掛け、バルク敏感な硬X線を用いた光電子分光測定により、Mg99.2Zn0.2Y0.6合金の本質的な電子状態の観測が可能なことを明らかにした。今後は、様々なZnおよびY添加量のMg-Zn-Y合金の内殻電子状態および価電子帯の光電子分光測定を行うことにより、局所クラスターの原子配列に関する議論を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の遂行にはMg合金における清浄表面を得るための表面処理技術の確立が最大の難関であった。現時点で最適な表面処理技術を確立することができたため、本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究の実施により、長周期積層構造を有する遷移金属とレアアースを添加したMg合金の電子状態の実験的な観測にはおおむね成功した。得られた電子状態の変化を議論するためには、レアアースや遷移金属がMg合金中のMgにどのように作用しているのかを詳細に議論する必要があり、そのためには大規模な第一原理電子状態の実施が必要である。そこで、今年度はこの大規模第一原理電子状態計算を実施、実験結果の解釈を進める予定である。 また、熱処理を施したMg合金の電子状態の観測も行い、熱処理における局所クラスター構造の変化も詳細に議論する予定である。 以上の研究を実施し、最終的に本研究を総括し、超周期積層構造を有するMg合金の相安定性メカニズムの解明を行い、新しい機能性材料の設計指針を確立する。
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