公募研究
本年度は、ブリッジマン法によって新たに育成された希薄Mg99.2Zn0.2Y0.6単結晶合金を対象として大型放射光施設SPring-8にて蛍光X線ホログラフィーを実施した。通常よりも、測定時間をかけて質の高いデータの取得を行った。これによりZnおよびYまわりの3次元原子配列を可視化することができた。A02班内の緊密な連携により、電子顕微鏡観察や電子エネルギー損失分光法、硬X線光電子分光法も組み合わせることで、ZnとYが形成するクラスター構造や電子状態を明らかにした。特に、従来の高濃度合金Mg75Zn10Y15などに形成されるZn6Y8クラスターとは異なる、希薄系特有のZn3Mg3Y8クラスターの形成を見出すことができた。このクラスターにより、希薄系においてもミルフィーユ構造の形成とキンク強化がなされ、高濃度合金と同等の力学特性を発現すると考えられる。現在、第一原理計算も含め、論文化を進めている。また、蛍光X線ホログラフィーの結果と合わせてより詳細なクラスタ―構造を導出するため、光電子ホログラフィーによる同合金の解析にも取り組んでいる。これにより、化学状態を分離した解析を試みている。本年度は、表面酸化膜を取り除くためのエッチング処理や真空中でのスパッタリングなどの手順を確立し、Mg、Zn、Yのホログラムパターンを得ることに成功した。この結果に関しても、現在、Zn6Y8クラスターやZn3Mg3Y8クラスター構造から得れらるホログラムターンとの比較を行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
希薄Mg-Zn-Y合金の蛍光X線ホログラフィーにおいて、非常に質の高いデータを得ることができた。また、光電子ホログラフィーで問題となっていた表面酸化膜の除去に関しても、エッチングやスパッタリングの手順や条件を確立し、明瞭なホログラムパターンを確認できた。以上より、計画は順調に進展していると考えている。
今後は、熱処理を施してあえて力学特性を低下させた希薄Mg99.2Zn0.2Y0.6単結晶試料の蛍光X線ホログラフィー測定を実施する。これにより、力学特性と溶質原子の配列との相関を明らかにする。さらに、光電子ホログラフィーの解析を進め、より精密なクラスター構造モデルの導出を行う。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Applied Physics Letters
巻: 120 ページ: 052905
10.1063/5.0076325
Physical Review B
巻: 104 ページ: 144101
10.1103/PhysRevB.104.144101