研究領域 | ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製- |
研究課題/領域番号 |
21H00100
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
櫻井 伸一 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 教授 (90215682)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ラメラ構造 / ブロック共重合体 / キンク / 材料強化 / 2次元小角X線散乱 / 応力ーひずみ測定 / 同時測定 / 選択溶媒 |
研究実績の概要 |
近年、金属材料分野において、硬軟2成分からなる層状構造にキンクを導入することで材料が強化される現象が発見された。これを高分子に応用できるかどうかの検討のため、我々は硬軟2成分からなるラメラ状ミクロ相分離構造を形成するブロック共重合体に注目して研究を行なっている。これまでの先行研究では無配向ラメラ状ミクロ相分離構造を用いて行われており、キンクの導入方法も一軸伸長という材料の内部構造の破壊を伴う手法であった。従って当然の帰結ではあるがこれまでにキンクの導入による材料強化は実現していない。そこで本研究では、試料を一軸伸長することなしにキンクの導入ができないかどうか検討し、得られたフィルムに対して力学試験(引張試験)を行なった。
試料にはスチレンーエチレンブチレンースチレントリブロック共重合体(SEBS32)を用いた。この試料のSt/EB体積比は32/6である。また、分子量についてはMn=8.5×10000、Mw/Mn=1.25(ここで、MnとMwは各々数平均分子量と重量平均分子量)である。である。n-ヘプタンとジクロロメタンの混合溶媒(体積分率1:1)に5 wt%になるようにSEBS32を加え溶解させた。その後、溶液をシャーレに流し込み、室温で溶媒を蒸発させてSEBS32のフィルム試料を作製した。さらにこの試料を熱処理は窒素雰囲気下で150℃、3時間アニールを行なった。作製したフィルムに対し、2次元小角X線散乱(2d-SAXS)パターンのエッジ像(あるいはスルー像)測定を室温で行った。測定は高エネルギー加速器研究機構・放射光実験施設で行った。X線の波長は0.118 nm、検出器としてPILATUS2Mを用いた。
作製した熱処理試料ではラメラ構造を垂直配向させることに成功し、材料へのキンクの導入にも一部成功した。今後、ラメラ構造にキンクを導入する方法を精査し、キンク強化を検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、一軸延伸によってのみ、キンク導入することができなかったが、この手法では、材料強化を確認することができないという致命的な欠陥があった。今回、選択溶媒を用いた溶液キャスト法で、自発的キンク導入に成功したので、非常に大きなブレイクスルーである。最近ようやくスチレンーブタジエンースチレントリブロック共重合体が形成するラメラ状ミクロ相分離構造にもこの方法が適用でき、曲がりなりにもキンク導入にこぎつけた。今年度はこの試料の力学測定を実施して、材料強化の実証を行う予定であり、すぐに取り組める。既に5月の段階で、X線散乱と力学測定の同時測定を実施しているが、まだ、データ解析が終了していないため、ここで報告することはできないが、研究としては概ね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、スチレンーブタジエンースチレントリブロック共重合体が形成するラメラ状ミクロ相分離構造に自発的にキンクを導入した試料の力学測定を実施して、材料強化の実証を行う予定である。既に5月の段階で、X線散乱と力学測定の同時測定を実施した。
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