公募研究
ブロック共重合体は性質の異なる2成分の高分子で構成される物質である.ブロック共重合体の最大の特徴は,各成分が自己凝集して100 nm未満のミクロ相分離構造を形成する点にある.組成を制御することで,球状,シリンダー状,ジャイロイド状,ラメラ状にその形態を制御することができるという性質を持っている.したがって,異方的な形態であるシリンダー状やラメラ状のモルホロジーを形成する場合,材料特性に異方性を持たせることが可能である.しかしながら,実際の材料にそのような異方的物性を発現させるためには,ミクロ相分離構造の配向を制御しなければならず,流動場,電場,磁場,温度勾配のような外場の印加が試されてきたが,中でも,流動場の印加が一般的である.この手法は,基板面に対して,シリンダーやラメラ構造を平行に配向させるために極めて有効であるが,垂直配向には全く非力である.一方,電場,磁場,温度勾配は垂直配向に有効であるが,大面積で,ある程度の厚みのあるシート状の試料に印加することには適さない.我々は,15 年程度前に選択溶媒を用いた溶液キャスト法による簡便な方法によって,厚みが1.0 mm 程度のシート状の試料の膜面に対して,シリンダー構造を垂直に配向させることに成功した.この方法は熱処理を行うことが付加的な工程として必要であるため,もっと簡便な方法(混合溶媒からなる選択溶媒の混合比を徐々に変化させて,非平衡なモルホロジーを形成させることなく,垂直配向化だけを引き起こさせる方策)を模索した.具体的には,2 種類の選択溶媒の混合溶媒を用いて,それらの混合比率を変化させて溶液を作製し,これを完全に蒸発させて得られたas-cast 試料中に形成されるナノ構造に与える効果を,透過型電子顕微鏡観察ならびに2 次元小角X 線散乱測定によって明らかにした.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of the Society of Materials Science, Japan
巻: 72 ページ: 37~44
10.2472/jsms.72.37