研究領域 | ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製- |
研究課題/領域番号 |
21H00107
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高木 秀有 日本大学, 工学部, 准教授 (40409040)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クリープ / 押込み試験 |
研究実績の概要 |
2021年度,共通試料であるMg97Zn1Gd2鋳造材において,様々な条件での溶体化処理及び時効処理を施した試料について,室温及び高温硬さ試験を実施した. 光学顕微鏡による観察によって,以下のことが示された.供試材から切り出した位置にもよるが,大体80%程度の箇所でデンドライド組織の様相を呈しており,その形状や間隔などは場所によって異なる.その他の部位では,デンドライド組織とは異なる様子を呈していた.なお,この組織は,溶体化処理温度が高い場合,あるいは予歪みを与えた後に溶体化処理を行った場合に見られる. 次に,圧延によってKBを導入した.供試材を溶体化処理後に280 ℃,5 hの熱処理を施し,圧延(圧下率0.14)すると,KBが導入される.しかしながら,その導入量は試片によって大きく異なる.この理由は現時点で不明だが,導入されたKBの大きさが結晶粒径であると仮定する,試片によって結晶粒径が異なる事や,観察面にKBが現出していなといった理由があるかも知れない.現状では,KBの導入量の差異,またその導入位置が不均一であることを記しておく. 最後に,KBが導入された試料に対する200℃における硬さ試験(荷重保持時間1 h)の結果を説明する.種々の作製手順で試料を作製し,それらの結果は以下のとおりである.KBが導入されると,200℃の硬さ値は20Hv程度高くなる.KBが導入された試料では,どのような手順で作製された試料においても,硬さの差は大きくない.全体に,硬さ試験の平均値の差,またそれぞれのエラーバは比較的大きい.この差異は,各試片の組織などに由来する違いもあると考えられるが,硬さ試験時にKBの直上あるいはKBが無いところに圧子が押し込まれたかなどの違いによる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,供試材として,MgZnGd材を取り上げた.この理由は,当該合金についての高温力学特性の評価結果の報告例が少ないこと,またKBや固溶原子による長周期積層構造だけでなく孤立の固溶原子による高温強度に対する役割についても検討できると考えたからである.しかしながら,KBが均一に,且つ,大量に導入することが,現段階ではできていない.このため,押込み試験法を用いての高温力学特性評価の結果の解釈に問題が生じている.この解決策として,一軸試験法を用いること,またMgZnY一方向凝固材を使っての実験に切り替えることを進めている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は,キンク変形帯がどの温度まで強化因子としての役割を担えるのか,転位強化と比べてより強化されるのか,またその強化メカニズムはどのようなものかを明らかにすることである. 2021年度は,Mg97Zn1Gd2合金に対する種々の条件で熱処理や圧延を施し,どのようにキンク変形帯が導入されるのかの調査と,またそれらの硬さ試験を実施した.これにより,当該合金のある程度の基礎的知見が得られた.一方,以後の力学試験を硬さ試験及び押込み試験によって実施するためには,キンク変形帯の導入量及びその導入数が少ない.このため,2022年度は,キンク変形帯が緻密に導入される試料である,MgZnY合金の一方向凝固材について,硬さの温度依存性と押込みクリープ試験による応力指数評価を実施する.これにより,キンク変形帯が,クリープ強度に対して強化因子としてなり得るか,またその強化に温度や変形速度依存性が存在するのかを明らかにする.
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