研究領域 | ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製- |
研究課題/領域番号 |
21H00109
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
上路 林太郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (80380145)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キンク強化 / パーライト / 鉄鋼材料 / 高温変形 / 塑性変形 / ひずみ速度 / セメンタイト |
研究実績の概要 |
ミルフィーユ材料のキンク形成とその力学特性との関係に関する研究が盛んに行われている。炭素鋼のパーライト組織はミルフィーユ構造を有する実用材の代表例であり、キンク状組織が形成される可能性がある。パーライト鋼においてキンク強化の応用を検討するにあたり、キンク形成の活性化が可能な変形条件を明らかにする必要がある。そこで、パーライト鋼における変形温度とキンク形成の関係およびそれに伴う硬さと高温変形抵抗を明らかにすることを目的とした。 ばね鋼(0.53wt%C-1.48%Si-0.76%Cr-0.70%Mn-Fe)を用いた。直径8mm×高さ12mmの円柱試験片に対して950℃にてオーステナイト化後700℃にて1.0ksec保持しパーライト組織を得た。その後、各種温度・定ひずみ速度の圧縮試験を行った。さらに、室温・1/sec圧縮により変形を与えた試験片に対して、室温ビッカース硬さ試験と高温(400℃, 500℃, 600℃)再圧縮試験による変形抵抗評価を行った。 圧縮率の増大に伴いプレート形状を有するキンク状組織の数と硬さは増加した。キンク状組織を伴うパーライトコロニー(ほぼ同じ伸長方向を有するパーライト組織領域)の数密度と圧縮温度の関係を調査した結果、300℃以下の圧縮において比較的多くのキンク状組織が観察された。変形温度とひずみ速度感受性指数(m値)の相関を検討した結果、低いm値を示す変形条件にてキンク状組織の形成が活性化されることが明らかとなった。室温で各種圧縮まで圧縮した試験片を、加熱して高温再圧縮試験を行うと、室温圧縮により、高温圧縮試験により示される変形抵抗の増大は認められるものの、キンク状組織の増大に伴う高温変形抵抗の大きな変化は認められなかった。これらの結果より、キンク状組織を導入する荷重軸方向と異なる方向で強度試験を行う必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キンク状組織の形成条件が明らかとなるなど、当初の計画どおり進展している。
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今後の研究の推進方策 |
キンク状組織導入の変形軸と強度評価の荷重軸の関係を検討する必要性が明らかになったことから、二段目圧縮軸を一段目圧縮方向と異なる向きに設定した試験を行う予定である。異なる変形条件における高温変形抵抗の検討を継続するほか、キンク状組織を有するパーライト鋼のキンク状組織の熱的安定性を検討する。具体的には、室温圧縮量を変化させさ際のセメンタイトの球状化挙動を測定し、圧縮時に導入される各種不均一変形との関係を明らかにする予定である。
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