公募研究
一つの原子核と電子で構成される系を原子と呼ぶが、電子と陽電子が結合したポジトロニウム(Ps)は原子に“準ずる”系であり、原子と結合して化合物(ポジトロニウム化合物)を作る。この系では、Psが部分系として現れて分子の性質を示すこともあれば、陽電子が存在しない時の電子相関が維持されて原子の性質を示すこともある。すなわちポジトロニウム化合物は分子と原子の階層にまたがる新しい階層に属する。本研究では、二電子系ポジトロニウム化合物に着目し、四粒子系波動関数を三次元構造解析することでPs部分系を可視化する。部分系の構造や歪みの情報に基づいて、Ps化合物の新しい描像を原子と分子の両面から解明することを目的とした。最も単純なPs化合物の一つである水素化ポジトロニウムについて、二つの粒子間ベクトルの角度と大きさの相関から、電子と陽電子が連れ立って運動している様子が三次元的に明らかになり、Ps部分系の存在が明瞭に示された。さらに、二つの粒子間ベクトルのペアを切り替えて包括的に構造を考察することで、Psの分子内分極の様子を可視化できた。本研究では、これまで研究例の少ない水素化ポジトロニウムの「第二束縛状態」へ研究を展開した。この状態は、水素原子とポジトロニウムの励起状態同士が結合した系であり、束縛エネルギーの観点から、基底状態に比べて励起Ps部分系の発現がより明確であることが期待されていた。本研究では、この状態の光学遷移による自然解離過程を計算し、この描像を裏付ける結果を得た。加えて、これまで知られていなかった、「系全体がわずかに構造変化を起こす際の放出光スペクトル」を明らかにした。この研究をもとに、ポジトロニウムだけでなく、クーロン多体系の光解離断面積の振る舞いが部分系の構造と結合の程度と相関することを明らかにした。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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