研究実績の概要 |
陽子・中性子の間に働く核力を、ストレンジクォークを持つハイペロンに働くバリオン間力に拡張することができる。2個のΛ粒子が束縛したダブルΛハイパー核の質量測定を通じて、Λ粒子同士の間に働く相互作用に関する情報を引き出すことができる。従来のダブルΛハイパー核の研究は原子核乾板を用いて行われてきたが、我々は磁気スペクトロメータを用いてダブルΛハイパー核の2体崩壊によって生じる負電荷のπ中間子の運動量を測定することで、ダブルΛハイパー核の質量を決定する崩壊π中間子分光の実験を検討している。具体的には、質量数が最も小さいと理論的に予想されている5ΛΛHというダブルΛハイパー核を、7Li(K-,K+)反応によって生成されるΞハイパー核7ΞHの崩壊を通じて生成し、5ΛΛH→5ΛHe+π-という2体崩壊により放出されるπ中間子を、ソレノイド電磁石およびTime Projection Chamber (TPC)などから構成される磁気スペクトロメータにより運動量解析する。 本研究では、カソードパッド1350枚のうち1/3の信号読み出しを行うためのFADCカードを導入し、TPCの信号読み出しおよびデータ収集系の整備を行った。TPC内部にプラスティックシンチレータを設置し宇宙線がTPCを貫通した事象を記録し、オフラインでデータを解析した。TPCは9層からなるが、各層においてカソードパッドの信号電荷の重心を求め、それをもとにヒット点を直線でフィットすることで、各層の位置分解能を0.5mm程度と評価した。
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