公募研究
核子の内部構造を探る鍵となる、排他的ドレルヤン反応(π-p→γ*n→μ+μ-n反応)断面積測定実験のための、高位置・高時間分解能ミューオン検出器の開発を行った。このミューオン検出器には、Resistive Plate Chamber(RPC)と呼ばれる検出器を用いる。RPC検出器は安価に大面積化でき、高時間分解能を持つことが特徴の検出器で、これまで主に時間測定用に用いられてきた。本研究では、位置分解能も優れたRPC検出器を開発し、ミューオンの通過位置・時間の同時測定に用いる。RPC検出器はガラスを積み重ねた構造のガス検出器である。ガラスの外側に電圧印可用のカーボン電極が貼られ、さらにその外側の読み出しストリップを用いて信号の読み出しを行う。これまでの飛行時間測定用のRPC検出器には、25 mm程度の間隔で上下で同じ方向を向いた読み出しストリップが用いられてきた。位置測定用のRPC検出器では、読み出しストリップを数 mm程度の間隔に狭め、上下のストリップの方向を90度回転した読み出しストリップを開発する必要がある。初年度はこの位置測定用のRPC検出器と、信号増幅に用いるアンプの製作技術の確立を行った。読み出しストリップは5 mmの間隔を維持しながら、1000 mm × 500 mmの大型化に成功した。また、アンプも5 mm間隔の入力・出力を持つ基盤の製作に成功した。読み出しストリップとアンプの接続には、小型コネクタであるU.FLを導入した。製作したRPC検出器とアンプは、性能評価試験を行った。
3: やや遅れている
5 mmの狭い間隔で、上下で異なる方向の読み出しストリップを持つ、RPC検出器とアンプの製作技術を確立した。製作したRPC検出器と、アンプの性能評価試験を行った。アンプの増幅率が高く、アンプの出力側から読み出しストリップへのフィードバックにより、大きなノイズがのってしまうことが分かった。このノイズにより、RPC検出器の位置・時間分解能の性能評価試験を年度内に行うことができなかった。
アンプからのノイズの安定的な抑制方法の確立を行い、製作したRPC検出器の位置・時間分解能の評価を行う。ノイズはアンプからのフィードバック起因であるため、アンプと読み出しストリップの間に遮蔽体を入れることで抑制できる。遮蔽体を含む筐体の設計・製作を行う。安定したノイズ抑制方法の確立後、ビーム試験により、位置・時間分解能の性能評価を行う。
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