原子核中に存在が期待される重陽子やダイニュートロンを観測する手段としてこれらの“粒子(クラスター)”を叩き出す反応が提案されている。本研究では、近い将来に測定が予定されているクラスターノックアウト反応断面積と、核内におけるクラスターの存在確率を正しく結びつけるため、重陽子やダイニュートロンの弱束縛性・非束縛性を取り入れた新しい反応模型CDCCIA(離散化チャネルインパルス近似)を構築した。本年度は、前年度に構築したこの模型を用いて重陽子ノックアウト反応の詳細な分析を進め、その結果を学術誌Physical Review Cに発表した。また、CDCCIAをダイニュートロンノックアウト反応にも適用し、その結果をいくつかの研究会で報告した。この成果は学術論文として投稿の準備中である。 本研究の主要な成果は以下の3点である。 1. 脆い/束縛しないクラスターのノックアウト反応を正確に記述する新しい反応模型CDCCIAを構築したこと。 2. 重陽子ノックアウト反応において、重陽子の破砕や再形成は、断面積に数十パーセントの影響をもたらし得ることを明らかにしたこと。 3. ダイニュートロンノックアウト反応で得られる2中性子エネルギー分布から、核内ダイニュートロンの形成度を抽出する道筋を付けたこと。 これらの成果は、来たるべき系統的クラスターノックアウト反応実験の分析になくてはならないものであり、本研究により、観測量と原子核内のクラスター構造を結びつける手段が整ったといえる。
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