本研究の目的は陽子・原子核衝突実験におけるΦ中間子の質量変化を高統計のΦ→K+K-崩壊によって研究するため、その測定手法を確立することである。このため、K中間子識別を行うMRPC検出器、エアロジェルチェレンコフ検出器、およびスタートタイミング検出器を開発している。 2022年度は、ガラス昇温による耐高レートが期待されるMRPCを新たに2台製作した。これらにおいて、2021年度に製作したMRPC初号機で生じたポリカーボネート製ガスチェンバーのガスリークの問題を解決した。また初号機で見つかったケース組み立てに使用した接着剤からのアウトガスによるゲイン低下の問題を、接着剤の変更によって解決した。また昇温によって生じるガラス板とポリカーボネートの間の膨張率の違いによってカーボンシート電極に歪みが生じる問題も、カーボンシートとポリカーボネート板間の接着をしない製作方法に変更することによって解決した。さらに、2月のLEPS2における電子ビームを用いた試験、および3月の筑波大学における宇宙線による試験において、カソード・アノード間の電圧およびDiscriminatorの閾値を最適化することによって、要求性能を満たす70psの高時間分解能を達成した。 π中間子除去のためのエアロジェルチェレンコフ検出器については試験機を製作し、宇宙線による試験を開始した。さらに、25セグメントのプラスチックシンチレーターから構成され、MPPCによりシンチレーション光を検出する10cmx10cmの有効面積のスタートタイミング検出器を製作した。 これら製作した検出器の高レート環境における試験を2023年度前半にJ-PARCで実施する予定であり、そのための検出器架台も製作した。
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