研究領域 | ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理 |
研究課題/領域番号 |
21H00146
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
永瀬 丈嗣 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (50362661)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体材料 / ハイエントロピー合金 / 凝固 / 偏析 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
ハイエントロピー合金(High Entropy Alloy, 以下HEA)は、構成元素の多様性を特徴とし、これまで金属材料では注目されていなかった「エントロピー制御」の概念のもと設計・開発が進む、新たなカテゴリーに属する金属材料である。HEAの中でも、生体用金属材料として開発がすすむ生体用ハイエントロピー合金(High Entropy Alloy for Metallic Biomaterials, BioHEA)は、構成元素の多様性に直結する偏析が生体適合性に大きく影響する新たな生体用金属材料である。 本研究では、偏析制御に注目し、Ti族元素を中心とするTi-BioHEAに加え、コバルトクロム合金をベースとするCoCr-BioHEAも視野に入れた合金開発を行った。主な成果は、(1)Ti-BioHEAの構成元素としてAlが利用できることの実証、(2)Ti-BioHEAにかわるCoCr-BioHEAの開発、にまとめられる。 Alは多くのHEA合金系における主要構成元素として用いられるが、BioHEAの主要構成元素となりえるのかについては未だ明らかとなっていなかった。Ti系BioHEAの構成元素としてAlを利用することができれば、その合金設計範囲は大きく広がると考えられた。そこで、TiZrHf等原子組成合金を出発としてAlを含む新合金の開発を行い、Alが利用できることを実証した。 Ti-BioHEAの主要構成元素は高融点元素であり、かつ極めて強い偏析傾向を示すため、凝固プロセスを通して直接組成が均一な固溶体を作製することは極めて困難である。そこで、Ti系BioHEAではなく、生体用金属材料として実用的に用いられているCo-Cr合金をベースとしたCoCr-BioHEAの開発を試み、超多成分CoCr-HEAの開発を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ti-BioHEAの構成元素の一つとしてAlが利用できることを明らかとするとともに、Alを含む合金の固溶体形成傾向および偏析の特徴を明らかとすることができた。 Ti-BioHEAに代わる新たな合金系であるCoCr-BioHEAの開発をすすめ、完全に偏析を制御できてはいないが、Ni元素を含まない超多成分HEAの開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
偏析制御の観点から見て、Ti-BioHEAでは偏析傾向が大きく、積層造形法の適用は極めて有効ではあることを明らかとしてきたが、積層造形を用いなくても偏析の制御が可能な新たな合金系の開発が必要と考えれた。そこで、Ti-BioHEAについては、5元系・6元系合金だけではなく、さらに構成元素を増やした合金の作製が可能であるかの検討を行い、多成分化・エントロピー効果の利用によって新たな合金系の探索を行う。 CoCr-BioHEAでは、いくつかの候補合金の開発は達成したが、既存開発の合金ではまだ偏析を完全に抑えることが出来ないことが明らかとなっている。そこで、さらに構成元素を拡張・検討することで、新たな生体HEAの開発を行う。
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