研究実績の概要 |
ハイエントロピー合金は元素の多様性と不均一性を基本とする新たな金属材料群である。チタン族元素を中心元素とするハイエントロピー合金では,構成元素の多様化に起因する凝固偏析と,これによって生じるマイクロメートルオーダーの構成元素不均一が生じる。このようなマイクロメートルオーダーの元素・組織の不均一性が,生体細胞の基本的な大きさであるマイクロメートルオーダーでの細胞接着組織と対応する時,元素の不均一性と多様性にもとづく新たな生体適合性発現メカニズムが発現すると考えられる。本研究では,凝固偏析を制御することでマイクロメートルオーダーの元素分布の不均一性を制御した新規な生体用ハイエントロピー合金(High Entropy Alloy for metallic biomaterials, BioHEAs)の創製を試みた。その結果,Ti-Nb-Ta-Zr-Mo5成分系合金に加え,Ti-Zr-Hf-Co-Cr-Mo合金やTi-Zr-Hf-Nb-Ta-Mo合金など6元系の生体用ハイエントロピー合金の創製を世界に先駆けて達成した。 生体用ハイエントロピー合金の構成元素は,4族元素・5族元素・6族元素から構成されており,その構成元素は耐火ハイエントロピー合金(Refractory High Entropy Alloys, RHEAs)と類似性がある。BioHEAsおよびRHEAsの新たな展開を検討するため、新たな構成元素としてAlが利用できるかどうかの検討を行った。Alを利用することができれば、その合金設計範囲は大きく広がる。本研究により、Alを主要構成元素としたTi-Zr-Hf-Al-V系HEAの創成を達成した。この成果によって、Ti系BioHEAsの新たな合金系の開拓が達成された。
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