公募研究
短範囲規則状態が存在するとされているCrMnFeCoNiハイエントロピー合金とCrCoNiミディアムエントロピー合金に対して種々の熱処理条件に伴う電気抵抗変化を測定し,短範囲規則状態の形成温度を決定する.さらに等温焼鈍,等時焼鈍法を用いることで,短範囲規則状態の形成速度,形成に係る活性化エネルギーの導出を行うことを第1の目的とした.短範囲規則状態が異なる試料について単結晶弾性定数の測定を行い,短範囲規則状態の形成に伴う弾性的性質の変化を明らかにする.また,体積弾性率の導出を行うことで,短範囲規則状態の形成エンタルピーを算出することを第2の目的とした.本年度は昨年度行った電気抵抗測定において顕著な特徴が現れた温度域でどのような組織変化が起こっているのかを明らかにするため,SEM・TEM・X線回折測定による内部組織の観察を行なった.また,熱処理に伴う単結晶弾性定数の変化についての測定を行なった.加熱過程における大きな電気抵抗の増加過程では,転位組織の回復は起こっているが,電気抵抗の増加につながる析出物の形成などは観察されなかった.一方,電気抵抗の減少過程は再結晶に対応していることが明らかとなった.加熱過程と冷却過程で電気抵抗値が一致していることから,結晶粒径は測定精度の範囲内で電気抵抗値に影響を与えていないことが明らかとなった.短範囲規則形成に伴う単結晶弾性定数の変化を測定するため.CrCoNi合金を700℃から焼き入れた直後と400℃で一週間熱処理したものについて弾性定数の測定を行なった.焼鈍により短範囲規則状態が形成された試料では弾性定数が大きくなっていることが明らかになった.これらの弾性定数の中で体積弾性率は結合エネルギーとほぼ比例関係あることが知られている.これから短範囲規則状態形成に伴う結合エネルギー変化が約6kJ/mol程度であることが明らかとなった.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Journal of Alloys and Compounds
巻: 941 ページ: 169016~169016
10.1016/j.jallcom.2023.169016