研究領域 | 宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。 |
研究課題/領域番号 |
21H00173
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
中村 浩二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (00554479)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 半導体 / 飛跡検出器 / LGAD / 医療応用 / 分子イメージング |
研究実績の概要 |
現在、我々が開発中の増幅機能付き半導体検出器(LGAD)は、世界最高レベルの検出時間分解能(約30ps)が達成可能な半導体検出器である。本研究課題はこの検出器に検出位置分解能を持たせること、荷電粒子による最小電離作用で生成する電気信号だけでなく、可視光や赤外光に感度のある検出器を開発することを目的とした。 初年度は、検出位置分解能に関しては、検出位置による一様性を担保したまま電極を細密化することが可能となる静電容量型LGAD検出器(AC-LGAD)を開発した。AC-LGAD検出器はセンサー全体で一つの増幅層を配置し、細密化されたアルミ電極から信号をAC 的に読み出すことで位置分解能を得る。増幅層の不純物濃度が高いと抵抗が小さいため、隣接する電極間への信号のクロストークが予想されるため、抵抗値を大きくする必要があるが、不純物濃度が低すぎると空乏層がシリコン表面に到達し降伏電圧が下がる。また、クロストークの大きさは、AC的に読み出す電極の静電容量にも依存することが予想されるため、酸化膜厚の条件振りも行った。結果として、増幅層の不純物密度を下げることでクロストークが減少する傾向を観測した。またAC電極の静電容量の大きさが大きいほど信号が大きくなりクロストークが減少することが分かった。さらに、ストリップ型検出器において、ストリップ長が長くなると電極間容量により信号のクロストークが増加することも新たにわかり、ストリップ長を変える条件振りも新たに加えてくクロストークのストリップ長依存性も測定した。これにより10mm程度のストリップ長では、電極間容量により隣接する電極に合計50%程度の信号がクロストークすることも観測した。以上のことからストリップ型検出器よりピクセル型検出器の方が性能が良く、試作した200um角、150um角、100um角のすべてのタイプで信号を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題はAC-LGAD検出器技術をちいて、1)検出位置分解能を持たせること、2)荷電粒子による最小電離作用で生成する電気信号だけでなく、可視光や赤外光に感度のある検出器を開発することを目的とした。 初年度の目標は1)に関する成果を上げることで、非常に順調に成果が得られた。 新型コロナウィルス感染拡大の影響で、一部、海外実験施設を利用したテストビーム実験ができず、予算を繰り越しを行ったが、日本国内の施設を利用して代替実験を行うことができ、大まかな研究計画に支障はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の計画は、荷電粒子による最小電離作用で生成する電気信号だけでなく、可視光や赤外光に感度のある検出器の開発開発を行う予定である。可視光や赤外光は現在開発しているAC-LGAD検出器のアルミ電極で止まってしまうため、電極の透明化が必要不可欠である。ポリシリコン電極を持つAC-LGAD検出器の試作を行い、赤外光や可視光の透過率を評価することが本研究の2年目の課題である。また、ポリシリコン電極の内部抵抗による信号の減衰を評価し、各応用ごとに最適なポリシリコン電極の抵抗値を選択可能にするための参照値のテーブルを作成する。
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