研究領域 | 宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。 |
研究課題/領域番号 |
21H00174
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
門野 良典 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (10194870)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラスチックファイバー二次元検出器 / ピクセル型半導体検出器 |
研究実績の概要 |
本研究では、入射ミュオンとそれに後続する電子/陽電子/負ミュオン捕獲X線などの測定事象との対応を一つずつ同定することが困難である、というパルス状ミュオン利用実験の最も深刻な限界を克服するために、ビームパルス内の個々のミュオンの入射時刻と位置を二次元検出器で検出するとともに、試料中に停止したミュオンからの後続事象の時刻と二次元位置情報をピクセル型検出器を用いて測定し、これら2つの二次元画像の相関を取ることで事象間の一対一の対応を同定することが目的である。2021年度には、ミュオン画像用のホドスコープとして、アバランシェフォトダイオード(APD)を受光素子とするプラスチックファイバー二次元検出器の設計・製作をおこなった。当該ホドスコープは、運動エネルギーが4 MeVのミュオンビームを透過させる必要があるため、0.1 mm径という極細のプラスチックファイバーを使用し、それを幅14 mm、接着剤も含めた片方向の厚さを0.3 mm以下にする必要がある。そのため、同様のミュオン用ホドスコープの製作実績がある神田(KEK物構研)の協力の下で、まずx方向の検出器について、試作を兼ねたファイバーアレイの製作をファイバー加工メーカーに依頼し、ファイバー検出器が完成・納入された。また、陽電子画像測定用にシリコン(500 μm)と読み出し用集積回路TimePix3(55 μmピッチ、256x256ピクセル)を組み合わせたピクセル型検出器についても、メーカーから購入し年度内に納入が完了した。さらに、これらを一体として組み合わせてビーム実験を行うために必要な検出器架台の設計を行い、発注可能な段階にまで進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成する上で主要な製作物であるプラスチックファイバー二次元検出器の製作に目処が立ち、ピクセル型検出器の調達も完了した。いよいよ原理実証実験に向けての準備が最終段階に来ている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ミュオンホドスコープについて、y方向のファイバーアレイの製作を行う。また、昨年度製作したファイバーアレイとともにx-y方向に重ね合わせて支持するための構造、および陽電子画像測定用に購入したピクセル型検出器TimePix3を保持するための検出器架台を製作する。この架台はファイバー検出器を受光するためのアバランシェフォトダイオード(APD)設置端末を兼ねる構造にし、遮光を施す。また、APDからの信号を処理するために、我々が先にμSR用陽電子検出器として開発・実用化したKalliope検出器(32チャネル/モジュール)のシンチレータをファイバーで置き換えて使用する。読み出し回路数を節減するために、同時ヒットが無視できるx-y方向本ずつの対にして1チャネルを割り当て、128チャネルの対を4台のKalliope検出器でカバーする(17kピクセル相当)。データ収集システムは既存のμSR用システムを用いる。ピクセル型検出器からの信号の読み出しにはIPMUで開発されたソフトウェアを用いる。 ミュオン・ホドスコープ、およびシリコンピクセル型検出器がが組み込まれた架台が完成したところで、μSR測定について実時間画像相関法の原理実証のための実験をおこなう。J-PARCのパルス状ミュオンを用い、ビームパルス幅を超える回転信号が予想される純鉄(室温ゼロ磁場で48.7 MHzの回転信号)、石英(室温・横磁場10 mTで144 MHzの回転信号)を用いて高時間分解測定の実証を行う。後者については、印加磁場の大きさにより回転周波数を変化させ、観測される回転振幅の周波数依存性を測定し、測定系全体としての時間分解能の評価を行う。
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