公募研究
リチウムイオン電池の不適切な使用によって、電極に金属リチウムが析出することがある。金属リチウムの析出は、電池の容量劣化だけでなく、熱安定性を低下させる。持続可能な社会の実現のために、ますます使用されることが増えているリチウムイオン電池の中古電池の回収や再利用を促進する必要がある。一方で、金属リチウム析出によって、中古電池の回収や再利用が進んでいない実情がある。そこで安全を担保するために、金属リチウム析出を非破壊で検出することが求められている。従来の分析法では、分析箇所が表面付近に限られたり、破壊分析が主流であった。一方で、ミュオン特性X線による元素分析ではリチウムイオン電池内部に到達し、リチウムを捉えることができる。それはミュオンの透過性と、ミュオンを照射して発生するミュオン特性X線の高いエネルギーによる。さらに、ミュオンのリチウムによる捕獲率の違いを活用して、金属リチウムを高感度で非破壊検出できることを明らかにしてきた。これまでは電極内の平均値を捉えていたが、本研究では金属リチウムの面内の分布を捉えるイメージングを実現することを目的としている。当該年度は、J-PARCでのミュオンビームラインでイメージングの実験を実施するためのビームタイムを獲得することができた。従来のGe半導体検出器に加えて、SiやCdTe検出器の専門家との議論をし、リチウムのイメージング実験を計画している。次年度にはリチウムのミュオン特性X線のイメージングを実現するための予備検討を実施できる見込みである。
2: おおむね順調に進展している
J-PARCでのミュオンビームラインでのビームタイムを獲得することができ、これまで経験のないSiやCdTe検出器の専門家と議論を重ねることができた。次年度にはリチウムのミュオン特性X線のイメージングを実現するための予備検討を実施できる見込みであるため、概ね順調に進展することができていると考えている。
リチウムのミュオン特性X線のイメージングを実現するため、いくつかのSiやCdTe検出器を用いた予備検討を実施する予定である。各検出器のエネルギー分解能、時間分解能、空間分解能の各特性を活かして、どの検出器が本イメージングに適しているかを評価したいと考えている。各検出器はそれぞれ放射光やX線のイメージングに用いられて成果を挙げているが、パルスミュオンビームに適応し、リチウムのミュオン特性X線のエネルギーを検出することは初めての試みであるため、この実験により十分な検討を行う。
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Nature Review Method Primer
巻: 2 ページ: 5
10.1038/s43586-022-00094-x
https://member.ipmu.jp/SpaceTech_to_QuantumBeam/publicly-offered-research/2021-b01-4/index.html