公募研究
精神疾患患者ブレインバンク試料を利用した脳ゲノム情報解析を行うため、死後脳試料について、網羅的SNPs解析(統合失調症24例、双極性障害10例、健常対照77例、その他8例)、前頭前皮質及び尾状核におけるRNA-seq解析(統合失調症25例、双極性障害10例、健常対照27例)、統合失調症26例を含む前頭前皮質(42例)及び尾状核(63例)のメチル化アレイ解析、及びCNV解析(統合失調症16例、双極性障害10例、健常対照6例)を完了している。これらのオミックスデータを用いていくつかの解析を実施した。①統合失調症におけるmTORシグナルによるDPYSL2(CRMP2)の発現制御の異常について検討し、統合失調症前頭ではmTORの発現が増加し、前頭と上側頭回ではS6の発現が減少していること、統合失調症であることやDPYSL2の5′TOP領域のマイナーハプロタイプといった要因がpS6KやpS6等のmTOR翻訳制御エフェクターの高発現に必要であることを示した。②ストレス関連分子のmRNA発現量に基づき統合失調症病態を層別化し、各群でmRNA発現量の相違が大きい遺伝子トップ10について算出しIPAによるパスウェイ解析を実施した。③生前の臨床症状によるクラスター解析で統合失調症を層別化し、RNA-seqデータを用いて遺伝子発現のクラスター間比較解析を実施した結果、抗精神病薬治療反応性良好群が見出された。さらに各群で差の大きかったトップ10の遺伝子についてパスウェイ解析を行なったところ、10個中5個の遺伝子がDRD2との関連を認め、そのうち2つはDRD2の活性化/不活性化のサイクルの速度の律速に関与する分子であった。④その他、RNA-seqデータを用いて、いくつかの統合失調症病態関連分子についてタンパク-mRNA発現の相関を検討した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、死後脳オミックス解析で得られたデータに基づき、複数の統合失調症脳内分子プロファイル解析が進行しているため。
引き続き、統合失調症脳内分子プロファイル解析に基づく病態の層別化を実施し、研究のまとめを行う。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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