公募研究
ストレスは多くの精神疾患の発症に関係している。また同じストレスを与えても、個々の適応力の差で、脆弱性とレジリエンスに分かれるが、これらの二つの違いを説明できる生物学的機序は明らかでない。これまで研究代表者はストレス後の脆弱性とレジリエンスに、迷走神経を介する脳-腸相関が重要な役割を果たしている事を報告した。一方、可溶性エポキシド加水分解酵素(Ephx2)は、多価不飽和脂肪酸代謝に関わる酵素で、抗炎症作用を有するエポキシ脂肪酸を加水分解する酵素である。興味深い事に、Ephx2遺伝子欠損マウスは、社会的敗北ストレスを与えても、うつ様行動を示さないレジリエンスであることを既に報告している(Ren Q et al. PNAS USA 2016)。今回、社会的敗北ストレスモデルでうつ様行動を示すマウスの腸内細菌を抗生物質処置したEphx2遺伝子欠損マウスに与えると、炎症を引き起こし、うつ様行動を示すことを見出した。また腸内細菌叢解析で見出したうつ様行動に関係する腸内細菌を抗生物質処置したEphx2遺伝子欠損マウスに与えると、炎症を引き起こし、うつ様行動を示すことを見出した。さらに、横隔膜下の迷走神経を切断すると、上記の効果は得られなかった。すなわち、迷走神経を介する脳-腸相関が、レジリエンスを示すEphx2遺伝子欠損マウスをうつ様行動を示すマウスに変えることが出来た。本研究は、米国カリフォルニア大学デービス校のBruce D. Hammock教授との国際共同研究として実施し、国際誌に論文掲載した。
2: おおむね順調に進展している
申請書で計画した研究を国際論文に掲載し、新たな実験に着手して、結果も得られいる。
学習性無力モデル(電気ショックを与えるストレス)を用いて、うつ様行動を示すラットとうつ様行動を示さないラットの腸内細菌叢解析、血液中代謝物解析、脳各部位におけるグリア細胞発現等を行い、ストレス脆弱性、レジリエンスにおける、代謝物も含めた脳-腸相関の役割を明らかにする。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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