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2021 年度 実績報告書

シナプス誘導シグナルのインバランスに起因する社会性障害の多階層的理解

公募研究

研究領域マルチスケール精神病態の構成的理解
研究課題/領域番号 21H00190
研究機関富山大学

研究代表者

吉田 知之  富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (90372367)

研究期間 (年度) 2021-06-28 – 2023-03-31
キーワードシナプス誘導 / シナプス接着因子
研究実績の概要

シナプスの分化誘導を担う細胞接着分子Neuroligin 3 (NLGN3)遺伝子上の様々な変異が自閉スペクトラム症患者より見出されており、NLGN3が社会性発達の調節に重要な役割を担うことが示唆されている。しかし、NLGN3の機能変化が社会性発達の障害を引き起こすシナプス・回路病態機構は未だ十分理解されていない。従来、シナプス後部のNLGN3はシナプス前部のNeurexin (NRXN)1-3と結合してシナプスを誘導し(NLGN3古典経路)、この相互作用の破綻が自閉症を引き起こすと考えられていた。私達はシナプス前部オーガナイザーである受容体チロシン脱リン酸化酵素PTPRDのインターラクトーム解析から、PTPRDとNLGN3がシナプス間隙を挟んで結合してシナプスを誘導する新規の経路(NLGN3非古典経路)を見出した。NLGN3は同一の結合面を使って、全く同じ親和性でNRXN 及びPTPRDと結合するため、両経路は競合関係にあることが示唆された。NLGN3-PTPRD複合体の結晶構造を基にして、NRXN1-3もしくはPTPRDとの結合を選択的に遮断したNLGN3変異体をデザインし、それらの点変異を導入したノックインマウスを作出して、それぞれのシナプス誘導経路が社会性発達に与える影響を解析した。その結果、非古典(PTPRD)経路を遮断したNLGN3点変異マウスでは社会性が低下したのに対して、古典(NRXN)経路を遮断した変異マウスではむしろ社会性が亢進した。このことから、古典経路と非古典経路のバランスによって社会性が両方向性に調節されており、このバランスの破綻が社会性の障害につながることが考えられた。一方、PTPRDは様々なシナプス後部接着分子と競合的に結合してシナプスを誘導する。このシナプス誘導バランスを選択的に改変したモデルマウス系統を作出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初予定していたPTPRDによるシナプス誘導バランスの改変マウスモデル系統の樹立には成功したが、NLGN3による社会性発達調節の責任回路を可視化したマウス系統の樹立(ゲノム編集によるレポーター遺伝子のノックイン)がうまく進んでいないため。

今後の研究の推進方策

NLGN3による2つのシナプス誘導経路の破綻が社会性発達の障害を引き起こす回路機構に関する解析を進めるため、引き続き、社会性発達調節の責任回路の可視化マウス系統の樹立を目指す。また、PTPRDによるシナプス誘導バランスを改変したモデルマウス系統の解剖学的、行動科学的解析を進め、シナプス誘導バランス変調が神経発達障害に与える分子細胞機構の解析を進める。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] BST1 regulates nicotinamide riboside metabolism via its glycohydrolase and base-exchange activities.2021

    • 著者名/発表者名
      Yaku K, Palikhe S, Izumi H, Yoshida T, Hikosaka K, Hayat F, Karim M, Iqbal T, Nitta Y, Sato A, Migaud ME, Ishihara K, Mori H, Nakagawa T
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 12 ページ: 6767

    • DOI

      10.1038/s41467-021-27080-3.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Roles of type IIa receptor protein tyrosine phosphatases as synaptic organizers.2021

    • 著者名/発表者名
      Fukai S, Yoshida T
    • 雑誌名

      FEBS Journal

      巻: 288 ページ: 6913-6926

    • DOI

      10.1111/febs.15666.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Ptprd遺伝子マイクロエクソンの取捨選択調節が作り出す脳神経回路の設計図2022

    • 著者名/発表者名
      吉田知之
    • 学会等名
      生理学研究所研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 電気刺激を用いたヒトiPS 細胞由来ニューロンによる神経回路形成の促進法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      北嶋悠希, 今井彩子, 吉田知之, 森寿, 田端俊英
    • 学会等名
      第39回日本生化学会北陸支部大会
  • [学会発表] シナプスオーガナイザーPtpd遺伝子の微小エクソン選択パターンの解析2021

    • 著者名/発表者名
      川瀬 修平, 今井彩子, 北嶋悠希, 赤羽絢夏, 田端俊英, 森寿, 吉田知之
    • 学会等名
      第39回日本生化学会北陸支部大会
  • [学会発表] シナプス形成を指標としたグルホシネート曝露による中枢神経系への影響評価2021

    • 著者名/発表者名
      和泉宏謙, 出村舞奈, 今井彩子, 吉田知之, 小川良平, 森寿
    • 学会等名
      第55回日本実験動物技術者協会総会
  • [学会発表] Effect of the herbicide glufosinate-ammonium exposure on neural synapse formation2021

    • 著者名/発表者名
      Izumi Hironori,Maina Demura,Ayako Imai, Tomoyuki Yoshida, Ryohei Ogawa, Hisashi Mori
    • 学会等名
      第4回医薬品毒性機序研究会
  • [図書] シナプス接着タンパク質NLGN3を介した社会性の発達を調節する分子機構2021

    • 著者名/発表者名
      吉田知之
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      バイオサイエンスとインダストリー
  • [備考] 富山大学大学院生命融合科学教育部ホームページ

    • URL

      https://www.ils.u-toyama.ac.jp

  • [備考] 富山大学学術研究部医学系 分子神経科学講座ホームページ

    • URL

      http://www.med.u-toyama.ac.jp/molneurosci/index.html

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公開日: 2022-12-28  

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