研究領域 | マルチスケール精神病態の構成的理解 |
研究課題/領域番号 |
21H00192
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
大塚 稔久 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40401806)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | シナプス / ネグレクト |
研究実績の概要 |
プレシナプス末端のシナプス小胞放出部位の分子基盤アクティブゾーンの構成タンパク質であるCASTのKO母マウスは初産時に顕著なネグレクト様行動異常を示すが、2回目以降では改善される。このメカニズムを明らかにするため、養育行動を制御する脳領域や回路に限定した遺伝子やタンパク質のマルチオミクス解析を行う予定であったが、CAST KOマウスの繁殖状況が悪かったため、プロテオミクスのための各種検討を行った。まず、神経回路末端のプロテオミクスを行うため、近接ビオチンラベリング法を軸索末端で行う系の構築を試みた。ビオチンリガーゼTurboIDをシナプス末端へ集める方法として人工デザインされたエピトープALFAタグとその特異的ラクダ抗体ALFA nanobodyを用いた系を立ち上げた。その結果、ALFA-CASTを発現させた神経細胞にTurboID-ALFA nanobodyを発現させることにより、軸索末端の分子をビオチン化させることに成功した。また、マウス脳にTurboIDを導入する方法として、AAV PHP.eBセロタイプによる全脳感染の系を立ち上げ、研究室において作製したAAV-CAGGS-GFPを全脳感染させたところ脳全体に発現することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題が補欠採択のため秋からの開始になったことと、本研究で重要なCAST KOマウスの繁殖状況が悪かったため、CAST KOマウスを用いた研究が行うことが困難であった。しかし、予備的な検討を重ねた結果、プレシナプス末端分子を標識する技術に一定のめどが立った。
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今後の研究の推進方策 |
CAST KOマウスの軸索末端のプロテオミクスを行うため、CASTのファミリー分子ELKSにALFAタグを付けたALFA-ELKSマウスを作製しており、今後、CAST KOマウスと掛け合わせることにより、CAST KOマウスのシナプス末端のプロテオミクスを進める予定である。また、CAST KOマウスの繁殖状況も改善されたため、養育行動後のc-Fos発現解析により養育行動を制御する脳領域を特定し、トランスクリプトーム解析を進め、得られたデータを基にネグレクトの発症→回復期に軸索末端で起きる変化を予測する数理モデルの構築へと展開していく予定である。
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