研究領域 | マルチスケール精神病態の構成的理解 |
研究課題/領域番号 |
21H00196
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
貝淵 弘三 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 教授 (00169377)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 細胞内シグナル解析 / 報酬行動 / 細胞種特異的 / リン酸化 |
研究実績の概要 |
私たちは側坐核においてドーパミン1型受容体(D1R)刺激がPKA/Rap1/MAPKシグナル伝達経路の活性化を促すことで、快情動行動を制御していることを見出した。一方、D1Rとその下流シグナル伝達が如何にして神経細胞を賦活化させているかについては十分に理解できていなかった。これまでにD1R作動薬を処理した線条体スライスのリン酸化プロテオミクス解析から、D1Rシグナル伝達で制御されるリン酸化候補蛋白質としてKCNQ2を含む数種類のイオンチャネルを同定している。本研究では電位依存性カリウムチャネルKCNQ2に着目し、情動行動の分子基盤について解明を試みた。D1RシグナルによるKCNQ2チャネルの制御メカニズムを明らかにするため、MAPKがKCNQ2チャネルをリン酸化するかについて検討した。MAPKによるKCNQ2リン酸化候補部位はC末端細胞質領域に7ヶ所と推定された。マウスKCNQ2のC末端細胞質領域(KCNQ2C)を遺伝子クローニングし、GST-mKCNQ2Cリコンビナント蛋白質を精製した。in vitro キナーゼ試験によりMAPKがKCNQ2Cをリン酸化することを見出した。KCNQ2C内に位置するSer414、およびSer476アミノ残基をアラニンに置換したKCNQ2C-2A変異体ではMAPKによるリン酸化が著しく減衰した。これらの結果はMAPKがKCNQ2のリン酸化基質であることを示した。またKCNQ2コンディショナルノックアウトを用いた報酬行動解析から、線条体/側坐核のD1R発現型細胞特異的なKCNQ2遺伝子欠損は報酬行動の促進を引き起こすことを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は生化学的および電気手生理学的解析から報酬行動におけるKCNQ2シグナル伝達経路の活性化とその生理的意義を見出した。当該シグナル伝達経路は報酬回路異常を引き起こすうつ病などの精神疾患に関わっている可能性が高く、その成果は策定した研究計画の実現に大きく寄与するものである。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で同定されたKCNQ2シグナル伝達経路が、側坐核以外の脳領域で如何なる生理機能をもっているかについて明らかにするために、各種の脳領域から作成した組織ライセートを用いた生化学的解析から情動行動におけるKCNQ2リン酸化変動を包括的に検討する。
|