研究実績の概要 |
我々の精神活動は、遺伝子の階層から細胞、神経回路、組織・臓器、個体間のレベルまで様々な階層の相互作用の結果として生じる。近年、遺伝子の階層に関しては、多くの遺伝子が精神疾患リスク因子として同定されたが、個々の遺伝子変異がどのようにニューロンの形態や機能に異常をもたらし、行動レベルの破綻をもたらすのかは明らかになっていない。ニューロンにおいては、個々のシナプスの大きさが100 nm~1 umのスケールである一方、樹状突起や軸索をmmのスケールに亘って伸ばしており、従来、その全体像を記述することは容易ではなかった。 そこで、申請者は個々のシナプスの形態をニューロン全体に亘って正確に記述するための手法として、透明化超解像イメージングを独自に確立した(Cell Rep, 2016)。この手法を用いてマウス大脳皮質錐体細胞におけるスパイン分布の包括的解析を行ったところ、思春期特異的に劇的にスパイン密度が増える領域が存在することが明らかになった。そこで本研究では、5層ニューロンの微細構造の3Dアトラス作成を通して、統合失調症関連因子がニューロンの微細形態や機能に及ぼす影響を検討した。PSD95の欠失変異体(PSDΔ1.2)を用いることで、シナプス形成そのものに影響を及ぼすことなく興奮性シナプスを標識できることを確認した。これにより、興奮性シナプスの有無やサイズをより正確に定量できる。さらに、schnurri-2 KO、NR1 KO、ドミナントネガティブDISC1などの効果について包括的な解析を行った。
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