研究領域 | マルチスケール精神病態の構成的理解 |
研究課題/領域番号 |
21H00216
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
中村 加枝 関西医科大学, 医学部, 教授 (40454607)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | セロトニン / 黒質網様体 / 背側縫線核 / 自律神経反応 / 扁桃体 / 黒質緻密部 / 腹側被蓋野 / 光遺伝学的操作 |
研究実績の概要 |
本研究は、眼球運動を行うマカクサルを用いて、ストレス下の認知・行動変容のメカニズムを、扁桃体→大脳基底核相互関係とそれらのセロトニン制御の変化として明らかにする。しばしば観察される衝動性や嫌悪刺激への過剰な反応は、情動情報処理を担う扁桃体から、意思決定の神経基盤である大脳基底核への回路とそれらのセロトニンによる修飾の変容による脱抑制機能の破綻の結果である可能性を検討する。 2021年度は、情動の客観的指標としての自律神経応答についての総説を領域全体の論文のひとつとして発表できた(Kuraoka and Nakamura, 2002 Neuroscience Research)。また、マカクサルが嫌悪刺激を予測しつつ選択を行う眼球運動課題を遂行中、背側縫線核の一部の細胞群(具体的には、報酬刺激より嫌悪刺激により強く反応する細胞群)の神経活動が、ストレス下でも正しい選択行動を行う場合により強くなることを明らかにし、解析と論文執筆を進めている。 光遺伝学的操作については、サル2頭について、TPH2 GFP共染色の確認等、免疫組織学的検索をウイルスベクター注入注入部位(背測縫線核)および投射先(黒質網様部・緻密部、腹側被蓋野)について解析を進めている。さらに、光遺伝学的操作による行動変化と自律神経反応の変化についての解析を進めている。背測縫線核刺激と黒質緻密部や腹側被蓋野については、行動促進をもたらすことが示された。一方黒質網様部は刺激部位によって異なる結果が得られている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
背測縫線核については、異なる情動下での行動・神経活動について論文執筆に十分なデータがほぼ出そろった。論文化のための解析に時間を要しているので、加速化する必要がある。また、情動の客観的指標としての自律神経応答についての総説を領域全体の論文のひとつとして発表できた(Kuraoka and Nakamura, 2002 Neuroscience Research)。 新たな試みであったウイルスベクターの注入、解剖学的解析も2頭の動物について進めることができた。セロトニン選択性がやや低い傾向があることが判明したが、背測縫線核からドパミン系への投射という点では確実であるため、光遺伝学的操作の結果の解析も加速化する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
異なる情動下での神経活動記録については、大脳基底核系の黒質網様部や線条体、さらに扁桃体系の諸核について進める。神経活動とストレスレベルを反映する自律神経反応や選択・衝動的行動との関連を明らかにする。さらに、これらの領域についても光遺伝学的・薬理学的操作によりセロトニン細胞特異的操作を行い、脳領域間の関連と行動の変容を明らかにする。これまでサル2頭について、TPH2 GFP共染色の確認等、免疫組織学的検索をウイルスベクター注入注入部位(背測縫線核)および投射先(黒質網様部・緻密部、腹側被害野)について解析を進めてきたが、扁桃体系の核(BNST,中心核)についても解析する。
|