休眠卵母細胞の覚醒や排卵に向けた成長は、卵母細胞とその周囲に存在する顆粒膜細胞とのCrosstalkにより制御されている。我々は、卵母細胞と顆粒膜細胞のCrosstalkに欠かせない因子の輸送制御因子を新たに同定した。そこで、この因子が関わる詳細な分子メカニズムの解明を目指した。 これまでの研究で使用してCreマウスにおいて、標的遺伝子を破壊しない条件でも卵母細胞の成熟や発達に混乱が生じる可能性が新たに明らかとなった。そこで、我々が過去に樹立したB6-Ddx4<em1(CreERT2)Utr>を利用することとした。本マウスではタモキシフェン投与により標的遺伝子破壊が引き起こされるが、出生前にその破壊を誘導する方法は確立していなかった。そこで、過去の文献を参考に、胎齢15日から組換えを生じさせる方法の確立を目指した。胎児期における組換え誘導の有無を出生したマウスで検証した結果、100%の効率で卵母細胞特異的な組換えが生じることが明らかとなった。そこで、この系にて標的遺伝子の卵母細胞特異的な遺伝子破壊実験を行った。 卵母細胞の成熟機構に関与する遺伝子の特定はほとんど進んでいないため、本研究では、迅速は生殖細胞特異的な標的遺伝子破壊実験法の開発にも取り組んだ。我々が新たに開発した改変型ゲノム編集因子を生殖細胞特異的に発現するマウスシステムを構築し、その遺伝子破壊活性を評価した。2つの遺伝子座にて遺伝子破壊実験を行った結果、どちらの遺伝子座にも変異が認めらた。そのうちの一つの遺伝子はその破壊が生殖不全を生じさせることが知られている。そこで、表現型解析を実施した結果、期待通りに生殖不全の表現型を示すマウスを発見することができた。
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